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外国産ハナムグリが外来生物法を動かす?

      2015/07/16


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2011年11月「外国産ハナムグリ解禁」という中途半端なデマゴギー。

これは外国産ハナムグリが密輸と知って飼育販売していた一部の業者とブリーダーが流したデマである。
だが実際、一部の外国産ハナムグリを合法的に持ち込む事は可能となっている。正確には2009年10月30日付で植物防疫所データベースが更新され大半のカナブン、ハナムグリが輸入可能となっている。これをさも最近改定されたかのように謳っているのだ。

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販売者の嘘と脱法行為

そもそも「解禁」というワードが1999年11月にも悪用され、多くの密輸種が店頭やオークションに並んだ事は周知の事実。ゴライアスに代表されるハナムグリも例外ではなく昆虫全種「解禁」されたかのように誤解され一気に一般家庭での飼育が蔓延した。
現在もネット上で販売されている規制種は、密輸後に国内でブリードされ密輸と関連のない個人に転々と譲渡された個体であり、密輸の証拠と実行犯の特定が困難で、ましてや飼育者が逮捕されることもない。植物防疫所も対応に苦慮している。
上記の実情を逆手に取って「輸入は規制されているが飼育販売に規制はない」と脱法的主張をする人もいるがこれは真っ赤な嘘である。
輸入を認めない根拠が国内の農作物等の財産を保護する目的である事を考えてみれば分かる。国内に持ち込ませない事は保護の方法、対策であり、法の目的と趣旨は国内での「防除」にあるからだ。それは同法を全文読んでみれば理解できる。決して輸入規制だけの法律では無く、あくまで防除を目的としている。
よって植物防疫所では職務として規制種の回収駆除、販売自粛の呼びかけを行っている。強制力が弱い事に疑問を感じる人も多いようだが、昆虫には微小な個体も多く、意図しない形で付着や混入することがあり、それらを罰則の対象とすることは困難で望ましくは無い。しかし個人で飼養する甲虫などは明らかに意図されたものが多くなんらかの罰則はあっても良いのではないかとも思う。
しかし種によってはカブトムシでも重要性などが認めらる害虫となれば本気で回収される。事実、アブデルスツノカブトは一気に個人宅レベルまで回収されている。それは同法が野外個体と国内繁殖個体を、防除の観点で区別していない事の表れと考えられる。
意図的な嘘や曲解している人は悪質だが、「誤読」している人もいる事を付け加えておく。
誤読の代表例が植物防疫所HPの輸入に際しての注意事項や案内に「これらの種は輸入が禁止されています」等の文が記載されていることを法律の条文と混同しているケースだ。これらは輸入に関する案内であるから「輸入規制」と書いているだけであり、法律としての防除対象を輸入個体と限定しているわけではない。
あくまで法律上の防除対象は輸入とも国内繁殖個体とも限定せず「種」として括っている。どうしても条文では海外からの移入に注意する為、輸入時の事を詳しく謳われる傾向も誤解誤読の原因と言える。
さらに販売者の嘘を紹介しておこう。
「これらの個体は植物防疫法施行以前に輸入され累代されたものです…」云々
ここまでくるとファンタジーの世界、同法施行年は昭和25年であり60年以上前である。途中改正等もあるが、飼育法の確立時期などを考えても酷い言い訳だ。
この言い訳は過去に密輸が横行し堂々と販売されていた時期(行政の怠慢が原因)に飼育を始めた人が当時の大御所達に配慮し「近年規制された」と偽る事で「大御所」の違法行為を濁したのが元になった都市伝説のようなものではないかと私は考える。中には誤りと知って故意に記載する人もいるようだが。
さらにもうひとつ悪質な嘘がある。
「飼育販売に問題が無いことは植物防疫課に確認済み」という最早、犯罪的な嘘。
絶対にありえません。こういった発言があったのか私は各所に裏取りしましたが事実では無かった。
そもそも植物防疫課は正式な対応部署ではありません。農林水産省へ問い合わせると関連部署として防疫課が一旦対応しますが正式な回答は所轄の「植物防疫所」が行います。ましてや防疫課であろうと防疫所であろうと広義の意味で規制種は「害虫」として扱っており「問題ない」という表現は使わない。
この手の嘘は完全な捏造パターンと誘導パターンがある。
捏造は完全な創作であるが、誘導パターンは巧妙。回収や罰則に関する問い合わせをし即時の罰則があるか?と詰問し、それを「許可」と勝手な解釈をして、さもお墨付きを頂いたかのように振舞う詐欺同然の行為だ。
問い合わせ先を環境省としている人もいるがこれは論外、環境省は外来生物法。現在はヤンバルテナガコガネを除くテナガコガネ全種の飼養や移動を禁じているだけで、問い合わせをしても植物防疫所を案内されるだけだ。
まず知っておかなければならないのが、植物防疫法による輸入許可がホワイトリスト方式であるということ。ブラックリスト式の外来生物法と違い、許可種と判定された種のみしか持ち込みできない。「クワガタ、カブトムシ、ハナムグリ」などといった曖昧なカテゴリーでの許可は一切無い。当然、種名で検索して表示されない未判定種は持ち込みできない。よって密輸種のブリーダーの言い訳「グレーゾーン」なども存在しない。
一部のブログでデータベース未記載の種をグレーゾーンと記載しているが全くのデマである。こういったデマBLOGは植物防疫法を「検疫法」と表記するなど、ありえないミスタイプが散見され、調べずに思いつきで書いているものが多い。

※補足:平成23年3月の施行規則改正により検疫有害動植物の規定方法がネガティブリスト方式からポジティブリスト方式に変更されている。
これは国内で蔓延した場合、重大な被害を及ぼすものをネガティブで表示するより、ポジティブで表示することが妥当とするものである。措置を講じるのにネガティブを表示するという矛盾がもとよりあったためだろう。
これらは輸入検疫措置の対象となる有害動植物の取扱であって、いわゆる輸入検疫時の可否「ホワイトリスト方式」とは意味合いが異なる。
依然として国内持ち込みの際は「輸入可能」と判定された種以外は持ち込めず「未記載グレーゾーン」は存在しない。
2012年6月16日追記

突然始まった「解禁祭り」

話を本題に戻す。では何故?外国産ハナムグリの大半が2年も前に輸入可能種となっていたにも関わらず今までアングラ種とされ、ほとんどの人が事実を知らなかったのか。

分かりやすい原因としては植物防疫所の問題がある。データベース差分が非公開で広報的なアナウンスもしておらず防除に関わる情報提供者へも知らせていない。知っていたのは一部の業者とその関係者、偶然データベースを検索した数人のみということ。
それがここにきて急に「解禁」などというお祭りが始まった。
発端は一部のブリーダーがオークション等の説明に日付を明示せず許可種となった旨を記載したことが大きい。
この事態で一番困惑したのが密輸業者ではないだろうか。密輸と思われる事ゆえの専売状態と価格設定が崩壊する可能性が高い。アングラであることが価値を高め、儲けになっていたからだ。
2009年10月の時点で声高に「解禁」と騒がなかったことも納得できる。
騒げば昨日までは密輸だったと自白するようなものでもある。
(※2009年10月以前に持ち込まれた個体は未検疫であるため不明種扱い、これらの個体に学名表記した場合は密輸の疑いがかかる。が逮捕には至らないのも事実)

植物防疫法が外来生物法を動かす?

「外来生物法」天下の悪法とも呼ばれる。融通の利かないガチガチの規制で防除活動にすら支障をきたす。しかしここまで極端な法律にしなければならないほど生態系は危険にされされているとも言える。
この外来生物法、クワガタ、カブトも対象になる事が危惧され、数年前に大騒ぎになった事がある。しかし一般ブリーダーの反応は冷ややかだった。
前述にもあるように、植物防疫法をないがしろにする業者がいくら叫んでもそれは自らの権益を守ろうとしているようにしか見えなかったからだ。
強制力の乏しい植物防疫所を挑発し続けた業者も、罰則も取り締まりも厳しい外来生物法には太刀打ちできないと焦り、一般飼育者を煽ろうと躍起になった。が、一般飼育者の大半は「生態系に悪影響と判断されたら撤退する」と良識あるスタンスを見せた。
そんな戦々恐々とした時期も既に忘れ去られ、今では外来生物法を気にする人はほとんどいない。当時の大臣が異常なまでに鼻息が荒かったこともあるが。
しかし最近の動向で気になっている事がある。
まず、なぜハナムグリが輸入許可となったのか?

この件に関しては植物防疫所担当官も明確に説明はできず、ただ「法改正の一環」と答えるのみ。改正は学術的な知見とは無縁のようで、実際は「逸出すれば農作物を食害する可能性が高い種もある」との見解に変わりはないとの事だった。要するに政治判断という事らしい。
政治判断と言えば1999年以降、植物防疫法でクワガタカブトが大量に輸入許可されたのも、WTO(世界貿易機関)加盟直前の中国がアメリカ経由で圧力をかけトップダウンで許可された事は有名な話だ。この時リスク評価をした農林水産省植物防疫課の答えは「データ不足で評価不能」であったにも関わらず無視され強引に輸入許可となった。
この事は「週刊新潮」2010年7月22日号の記事「農水省と環境省が放置した、輸入解禁10年、外国産カブト・クワガタで生態系大破壊」によって明らかにされている。
この記事にはさらに興味深い内容が記述されている。
「縦割り行政のツケ」という章によると「もし環境省が外来生物法でカブトムシを規制するなら、植物防疫法の規制は外す」と低次元の脅しをかけたという。縄張り意識の強い省庁ならではの発言だ。
今回、農林水産省が外国産ハナムグリの大半を規制から外した事と直接関係はないが、無縁とも言えない。
外来生物法では知見データの不足を理由にクワガタ、カブト、ハナムグリが指定されなかった。がその他の理由の一つに「ハナムグリなどは植物防疫法ですでに規制されている」というものがあったからだ。
感のいい方はお気づきになったと思いますが、植物防疫法で新たに規制が外れた種は再度検討する必要が生じるのだ。
特に一部のハナムグリについては屋外での交雑が確認されており、植物防疫法の規制対象でなければ指定も十分あり得る状況であった。(注:件のハナムグリは現在も輸入不可)
この件について環境省に問い合わせてみたところ「専門家会合は5年以上開かれてはいないが、常にデータを収集し、指定の可否は検討されている。2009年に大半のハナムグリが防疫法の規制から外れた事も重要な変化と捉えている」との回答を得た。
動いているとも取れるが、具体的な変化が無いとも取れるなんとも微妙な回答だ。
しかし一旦動き出せば選定の基準もハードルが下がるだろう。日本固有種との交雑が可能なヒラタや植物を傷つける種は屋外での発見事例さえ揃えば可能性は高い。
これらの種が指定を免れた要因として「既に相当数が個人宅で飼育されており、規制が放虫を誘発する」という説があったが、屋外で頻繁に確認されればそんな事も言っていられないだろう。
外来生物法は厳しい罰則があるだけに指定は慎重であり、すぐに指定されるとも思えないが昆虫愛好家にとって無視できない法律になった事は間違いない。
解禁!と銘打った記事をアップしているブロガーは、せめて植物防疫法と外来生物法の基礎位は調べてから記事を書いて頂きたい。
植物防疫法が骨抜きになれば外来生物法が動き出す事を念頭に。

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