Dorcus sp. の真実


「Dorcus sp.」
新種か?新亜種か?地域変異か?
話題となって数年が経過した。

未だにDorcus sp.のままだ・・・

この「Dorcus sp.」については多くの誤解があるようなので、代表的な疑問点を纏めてみた。

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1、輸入問題
 不明未記載種であるのにどうして国内に持ち込めるのか?

2、学名&流通名問題
 なぜ新種記載されない?sp.とは?ドルクスSPは和名なのか?

3、累代・交雑問題
 不明種扱いのままで累代する問題点とは?
 ※これに関しては現在流通している個体に大きな影響を与えるかもしれませんが、事実として注意する必要があるため、あえて書きます。

以下、項目毎に解説してみます。

【輸入問題】
これに関しては、なんら問題はありません。
本来、生きた昆虫を輸入する際は、
属名(Odontolabis等)+種小名(femoralis等)までが最低限必要とされます。
これはツヤクワガタ属(Odontolabis)のフェモラリス(femoralis)までが必要と言う意味です。亜種名に関しては判明していれば記載するべきであって、不明なら記載の必要はありません。
しかし植物防疫法に基づく輸入規制で、植物防疫所は「Dorcus」を属で非有害と判断しています。
これは、Dorcusであることが解れば、輸入は可能であるということを意味します。
これらの事項は今回記事を書くにあたり再度、関係機関に確認をしています。

ちなみに Dorcus sp. は「不明種」ではなく「Dorcus属のある種」と読むのが正しい解釈です。
Dorcus属と予想し分類できないほどの特異性が見受けられない場合、Dorcus属のいずれかの種とするのが妥当な取扱いである。
しかし「新種、不明種」という言葉が独り歩きしてしまった結果、混乱してしまっているようです。
学名に関しては、後述の「学名&流通名問題」で詳しく解説します。

余談になるが、ハナムグリ密輸を肯定的にとらえる者達からの反論として
「輸入できない不明種 Dorcus sp. が許されて、ハナムグリ密輸が批判されるのは不公平」
との声がしばしば上がるが、前述のとおり全くの事実誤認である。
そもそも密輸と知っておいて、他の種を引き合いに出しても罪は罪。
あたかも Dorcus sp. が密輸であるかのような記述をされた方は、速やかに訂正し関係者に謝罪してはどうだろうか?

【学名&流通名問題】
まず「sp.」とはなにか?
これはラテン語で「種」を意味する species の省略形で sp. 複数の場合は spp. とします。
よって dorcus sp. は「ドルクス属のある種」、 dorcus spp. は「ドルクス属のいくつかの種」となります。
おそらく spp. については学術的な論文や報文を書かない人は使うことはないでしょう。
なかには、亜種を意味する ssp. と勘違いしている人もいるので間違ってコピペすると恥ずかしい。

この「sp.」の使い方で完全に間違っていて、例外も認められないのが・・・

①「sp」ピリオドを打っていない
species を省略形にしたことにならず、別の言葉や意味との区別がつきません。

②「SP.」大文字
これは論外です。分類学とは別の意味で「スペシャル」と解釈されます。
本気でそう思って使っている人もいるようです。

③「ドルクスSP」
なにも申すことが無いくらいに論外中の論外です。
この世の全ての過ちが詰まったような・・・

表記する際は例外なく「Dorcus sp.」です。

学術的表記よりも愛好家を悩ましているのが「和名・流通名」でしょう。
これに関しては「新種」として記載されない限り解決しないと思います。
なぜ新種として記載されないのか?

専門家ではないので知りません。
どの種にも分類されない新種と言えるほどの特異な特徴が見つからない、かといって、どの種とも同種と言えるほどのデータがない。
などなど予想されるが邪推すれば、以外にも不人気種の亜種や地域変異に分類されてしまいそうで怖いとか・・・

ここでもう一回確認ですが、「Dorcus sp.」という種類は存在せず、あくまで「ドルクス属のある種」です。
ですから世界中から輸入される Dorcus で、既知の種と違って見える個体はすべて「Dorcus sp.」で入荷します。
ですから「詳細産地」+「Dorcus sp.」で表記し流通するしか手は無いと思われます。
和名を「ドルクスSP.」としている人もいますが、各産地で別々の種小名や亜種に分けられた時の混乱の元であり、なによりネーミングセンスを疑われるので、ここは一つ「無かった事」にしてほしいです。

【累代・交雑問題】
大半のブリーダーがインブリードで累代しています。
これは当然といえば当然です。未記載の種で分類されていないから「Dorcus sp.」であり、アウトでブリードしようにも相手も未記載で未分類、同種である保障がありません。
アウトを入れてCBFnを表記している方もいますが分類学上、同種とする判別方法は何を用いているのだろうか?
記載種なら相手側が提示する学名を信用し写真などで同種と判断できるが、記載されていない「Dorcus sp.」は分類学的に判別することが難しい。
ブリーダーなら「Dorcus sp.」+「産地」だけで同種とはせず、外観で同様の形態であることを確認しているとは思う。
その個体が新種とされる論文があれば種を判別する根拠となるはずです。
しかしその記載がなされていません。

交雑への嫌悪感だけにとどまらず、同種同亜種であっても詳細産地まで一致させブリードさせるほど神経質なクワガタブリーダー達にとって未記載種のアウトブリードはどう映るのだろうか。
個人的には「Drcus sp.」とはいえ一定の判別はされているので、産地さえはっきり表記すれば問題は起きないとは思う。

しかし他の種でも起こっている問題がある。「高騰亜種と低価格亜種」の交雑問題だ。
これが新種記載前に起こった場合はどうなるだろうか?
勝手に予想させてもらうと…
「飼育下における個体変異の幅」の認識に影響するのではないか?と懸念している。
全く情報がないまま、標本としてではなく活き虫、それも繁殖用として流通した経緯を考えると初期の亜種間交雑か、産地違いの同亜種同士の交配があった時、誰がそれを指摘できたのだろうか?
亜種間交雑や異産地交配が頻繁に行われた状態で飼育データを集積し、その形態のバラつきを同種の特徴とされてしまう危険性は無視できない。
今のところ同産地で、目立って異質な形態をした「Dorcus sp.」は見受けられない。
しかし、今後のことを考えると「sp.」と称して長期流通するのは好ましいとは言えない。
早急に新種・新亜種として記載するか、既知の種に分類することが望まれる。

以上の事柄は、特に新しい情報ではない。
しかし輸入問題にしても皆、確認もせず様々な憶測を事実であるかの流布されている。
こういった誤解と憶測が「ドルクスSP」などという間違いを産んでいるのではないだろうか。
再度になるが…
早急に新種・新亜種として記載するか、既知の種に分類することが望まれる。

昆虫wiki ババクルビデンスオオクワガタ

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