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消えた「キロン」の謎と「シノニム」の商用利用

      2015/05/02

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みなさんは「キロンオオカブト」を覚えているだろうか?
数年前、あたかも新種かのように販売されていたあのキロンです。
とんと見なくなった気がしますが、実は今も大量に販売されています。
キロンオオカブトを学名Chalcosoma caucasus(コーカサスオオカブト)として売っているのです。
どうして専門業者がこんな事をするのでしょうか?

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皆さんが知っているコーカサスオオカブトは近年、学名が変更されています。
変更された学名こそ、Chalcosoma chiron なのです。
コーカサスは1801年にFabriciusによって記載されたcaucasusの学名で呼ばれてきたが、近年の検証により1789年にOliverによって記載されていたchiron(キロン)のタイプ標本がジャワ島産のコーカサスオオカブトと同種であるという事が判明。
同種と判定された以上、記載が早いchiron(キロン)に先取権が認められ、コーカサスオオカブトの学名はChalcosoma chironとなり、ジャワ島産のコーカサスが原名亜種Chalcosoma chiron chironとなる。

これにより、専門業者も学名Chalcosoma chiron、和名キロンオオカブトとして販売を開始した。
学名が重要視されないクワガタ・カブト業界では和名キロンオオカブトが新亜種かのようなイメージで捉えられたのか、オークションでは微妙な値上がりが見られた。
しかし、実際は学名が変更されただけで個体になんら変異があるわけではないことから、価格はすぐに元に戻る。
キロンのネームバリューがなくなると販売業者は一斉に和名をコーカサスオオカブトに戻した。
たしかにキロンよりコーカサスのほうが知名度が高く売りやすいとは思う。
しかし、ここであってはならないことが起こる。
あろうことか、学名表記までChalcosoma caucasusに戻してしまったのだ。

ウィキペディアなどには、シノニムとしてChalcosoma caucasusが記載されているが勘違いしてはいけない。
これは学名に変更があった場合、シノニムを知らないと過去の論文や報文が正しく理解できないなどの支障が生じるため、変更前の学名は知っておくべき事実として記述されているのである。
シノニムを単純に「複数学名」と誤解しているひとも多いが、これは完全な誤用である。
複数学名は認められずシノニムと判断された時点で、後に記載された学名は無効となり使用することが出来なくなる。
この場合の解釈は、
「Chalcosoma caucasusはChalcosoma chironの新参シノニムであるため使用は出来ない」
とするべきである。
よって、学名変更後の取り扱いは例外なくChalcosoma chironである。
事実、学識者や専門性の高い業者はChalcosoma chironを使用している。
対してChalcosoma caucasusで販売している業者は、学術的な知見を元にchironを否定しcaucasusを主張ているとは思えない。
これは完全な誤用か、商業的都合による詐称ではないだろうか?

故意に詐称してる人もいるのかも知れないが、おそらく最大の原因は植物防疫所のデータベースにあると思われる。
1999年に登録された「学名:Chalcosoma caucasus和名:コーカサスオオカブト」に対し、近年「学名:Chalcosoma chiron和名:未記載」で追加登録がなされた。
その際、双方の備考欄にシノニムの関係を記載しなかったため、データベース上は別々の種となってしまったのだ。
通関書類の名前も双方が有効となっているのであろう。
この植物防疫所のデータベースは学術的な根拠より実用性が優先されているため、レギウスオオツヤクワガタをタランドゥスの亜種として「Mesotopus regius」で登録している。
種小名の表記をregiusとしながら、Mesotopus tarandusの亜種とするデタラメな記述だが、持ち込もうとする業者の申請を認めてしまったため、こういった矛盾記載が残ってしまっている。
このような事実からして植物防疫所データベースや通関書類を「学名表記」の基準にすることは間違いの元であることは明白である。

和名に関しては明確な命名規約もなく、通用してナンボの世界なので、コーカサスオオカブトで問題ないと思う。
ウィキペディアによると「和名もキロンオオカブトにするべきと提唱されている」と記述されているが、和名が必ずしも学名の読みに準ずる必要は無いでしょう。
長年にわたりコーカサスオオカブトとして扱われ、亜種によって「ジャワコーカ」「スマトラコーカ」などの通称も広く認知された状態で、和名をキロンとするのは困難である。
一般的に流通の際は、和名と学名を併記することが多いようなので、

和名 コーカサスオオカブト
学名 Chalcosoma chiron

これで十分通用するでしょう。
和名のコーカサスが使用出来るのに、学名をChalcosoma caucasusにする事に意味があるのだろうか?
せめて「学名」というタイトルを使うなら最低限の勉強はしてほしい。
「学名は安易に転記せず調べる」
「記述方法は勉強する」
これくらいはお願いしたい。
学名は誤認という言い訳ができるが、記述方法は単なる不勉強とみなされます。
「まずはお前がイタリックを使う事からだ」
という声が聞こえてきそうだが…
DORCUS・SPとか平気で書いちゃう人は、私の記事を入門編にどうぞ
– Dorcus sp. の真実 –
http://ksl-live.com/blog359

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