犯罪者に飼育技術を教わるほど研究者はバカではない。

いきもの関連

【海洋堂】 国立科学博物館 カプセルミュージアム ヤンバルテナガコガネ
写真:【海洋堂】 国立科学博物館 カプセルミュージアム ヤンバルテナガコガネ

特定外来生物に指定されている「テナガコガネ」を密輸し販売した男が逮捕された。購入者も逮捕され、7月に逮捕された男を含め3名が逮捕されたことになる。
参考:テナガコガネ飼育で初の逮捕者、他の飼育者も晒しておく。
参考:テナガコガネ密輸販売で逮捕者、芋ずる式検挙は相次ぐか?
「密輸種飼ってる俺カッケー!」みたいな自称マニアは重度の中二病を患っており「御上に逆らう俺カッケー!」みたいな発想も大好きです。
そんな彼らが伝家の宝刀のように振りかざす自己正当化の言葉。
「バカな研究者は逮捕されたひとに飼育技術を教えてもらえ!」
なんで研究者が犯罪者に教えを乞う必要があるのでしょうか?
犯罪者の飼育技術が、研究者より上を行っているというのは何を根拠に言っているのでしょうか?

安心してください。研究してます。

ちょっと調べてみたら面白いページが見つかりました。
・ヤンバルテナガコガネを増やせ! 爆発栄螺
大半がリンク切れとなっていますが、タイトルからして興味深い記事を収集していることが見て取れる。
で、ここで話題になっている「ヤンバルテナガコガネ保護増殖計画」について軽く調べてみました。
1997年にはすでに、計画の策定が琉球新報により報じられている。
・ヤンバルテナガコガネの保護増殖計画を策定 自然環境保護審議会 – 琉球新報

生息状況等の把握・モニタリングを行い、その結果を踏まえて生息環境の維持・改善や密猟防止策の強化を図る。さらに人工繁殖技術の確立や人工繁殖を行うことなどで、自然状態で安定的に存続できる状態になることを目指す。

もう20年近く前に人工繁殖の計画があり予算が付いている。外国産テナガコガネをコソコソと密輸し、お小遣いを稼いでるようなオジサンには端から用はないと。

が、しかしですなー。
数が少ないヤンバルテナガコガネだけに、しばらくは緊急保護した幼虫を飼養するだけに留まり、捕獲してまで増やすということにはならなかったようです。
第二東京弁護士会の資料、2001年10月19日沖縄現地調査報告書によると、この時点では人工繁殖は行われていない。
・沖縄現地調査報告書(やんばる野生生物保護センター)

Q1 人工繁殖を行った例はありますか?
当センターではない。現在は緊急保護した幼虫が飼育中であり,人工繁殖に必要と思われる繁殖状況に関する,各種データを計測中である。

現在の保護増殖計画は平成27年4月21日付けの資料が最新と思われるが、どうやら人工繁殖個体の再放出の必要性に迫られているようにも見える。
・ヤンバルテナガコネ保護増殖事業計画(2015) 文部科学省 農林水産省 環境省

3人工繁殖及び個体の野生復帰
本種の繁殖は、生息地における野外個体群の維持・拡大を基本とするが、本種の生息確認数が極めて少ないこと等から、人工繁殖も積極的に試みる必要がある。このため、人工繁殖技術の確立に努め、人工繁殖を行う。なお、緊急保護した個体を野外に帰すことが困難な場合には、当該個体を活用して飼育下繁殖と本種の保全に必要な生理、生態及び行動に関する情報の収集に努め、必要な情報を蓄積する。
また、本種の野外個体群の増加を図るため適切な方法による個体の野生復帰のための技術を確立し、必要に応じて野生復帰を行う。個体の野生復帰に当たっては、遺伝的かく乱等により野外個体群の存続を脅かすおそれがあることに十分留意する。

結論 犯罪者の出る幕ではない

常識的に考えて、化学知識や施設・設備・予算、どれをとっても研究機関が上をいっているのは間違いない。
一般飼育者がデータや参考知識の提供を行うことがあったとしても、犯罪者が研究者に対し、上からものを言える立場になることはない。
密猟による個体数減少に関しても、開発による環境破壊のほうが個体数減少に悪影響であることは明白であるが、それだからと言って密猟や密輸が許されるわけではない。
双方の問題をそれぞれに解決することよりも、どちらが酷いか?という二択で語り一方(密猟)を正当化できるものでもない。
法を犯して密輸するような犯罪者や、それを知って購入し国内で繁殖するという愚行を正当化するために「研究者は無知」とまで言い切ったところで、それは井の中の蛙だと笑われるだけである。
アメリカ国防総省がロシアのハッカーを採用した!みたいなサクセスストーリーを描いているなら諦めた方がいい。
ハッキリ言ってレベルが違う。

皆様の支援が必要です KSL-Live!からのお願い

【ご支援をお願いします】取材・調査・検証記事はコピペまとめサイトのような広告収入は期待できません。皆様からの支援が必要です。各種支援方法詳細

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

OFUSEで支援する

このサイトをフォローしよう




いきもの関連テナガコガネ,人工飼育,密輸

Posted by ksl-live!