市場ずし(大阪)の問題を右と左のイデオロギー対立に利用するな

政治・社会

市場ずし謝罪文

写真:市場ずしホームページより

市場ずし(大阪)難波店が海外からの客に対し、わさびを大量に乗せた寿司を提供していた問題について同社はホームページに謝罪文を掲載した。
しかし、その内容は「差別」に関する謝罪ではなく、従業員が厚意で行ったサービスであり、差別や嫌がらせではないという驚きの内容であった。謝罪は「インターネット各所にてお騒がせ致しました」という点だけで、事実上の全面否定を同社の公式見解とするものだ。
この問題に関連して、差別問題に敏感な左派が同店を名指しで「燃やせ」とツイッターに投稿する問題も発生。一方では右派が「自作自演」「左翼が問題を利用している」などという持論を展開する場外乱闘に発展している。

従業員の証言を鵜吞みにする市場ずし

今回、市場ずしが公開した謝罪文は以下、

2016年10月2日

この度は弊社店舗での接客に関する内容で、インターネット各所にてお騒がせ致しましたことをお詫び申し上げます。
事実関係を確認しましたところ以下の確認が取れましたのでご報告いたします。

すしに多くのわさびを乗せていた件ですが、こちらはそのような事実がありました。
海外から来られたお客様からガリやわさびの増量の要望が非常に多いため事前確認なしにサービスとして提供したことが、
わさびなどが苦手なお客様に対して不愉快な思いをさせてしまう結果となってしまいました。
今後はこのようなことの無いよう、しっかりと対応させていただく所存です。

また、従業員による民族差別的な発言に関してはそのような事実は確認できませんでしたが、より多くのお客様に
満足していただけるよう社員教育を一層徹底してまいります。
出典:http://ichibazushi.com/

考えられないほどのお粗末な内容だ。
まず、内容以前に冒頭にも文末にも署名がなく、責任者は誰なのかが不明で運営会社の「逃げ」が透けて見える。
内容に関しても矛盾点が多く、従業員の苦しい言い訳をそのまま掲載しているとしか思えず、被害を訴える客側の主張は軽視されている。

どの会社でも同じことではあるが、寿司を握ることが許されるのは訓練された職人だけである。その職人が厚意でわさびを大盛りにするという事はまずあり得ない。厚意であるならば客にわさびの量を確認し適量にするはずだ。
民族差別的な発言についても否定はしているが、複数人が働く店舗において、大量のわさびで涙を流す韓国人や中国人がいても従業員は一切反応しなかったというのだろうか?
わさびが適量でないということは必ず話題になっていただろうし、それを諫める人間、もしくは喜ぶ人間がいたはずだ。通常このような謝罪文では「該当する従業員に店舗責任者が指導した」などと記載されるが、当時はその指導すら無かったのだろうか?
これは、差別的な意図でわさびを盛ったと言われて仕方ないだろう。

差別は右派、左派の問題ではない

この問題が「韓国人や中国人に対する差別ではないか?」と炎上したことで、差別に敏感な一部の人間が「店を燃やせ」などとツイッターに投稿したことで別方向での場外乱闘に発展している。
確かに「店を燃やせ」はマズい。場合によっては警察沙汰である。
だからと言って、市場ずしの対応が正当化されるものではないという事は議論の余地がないだろう。しかし、どうしても右派と左派のイデオロギーに囚われてしまう傾向にある人たちは「市場ずし擁護派 VS 市場ずし糾弾派」の対立図式に持ち込みたがる。これは完全に右派の分が悪い。中国韓国相手なら差別も許されるという主張にしか見えず、到底受け入れられない。
一部では「自作自演」「反日」という方向に持ち込もうと躍起になっている右派もいるようだが、市場ずしが行為自体を認めているうえ、この問題を韓国の掲示板に投稿した人は市場ずしを「嫌韓」としながらも、その現場で日本人が助けてくれたという内容も記述しており、日本への悪意はないことが確認されている。

隣に座っていた日本人のお客さんがカバンからティッシュを出して渡してくれました。
全部吐き出してやっと生き返った感じでした。その日本人のお客さんがわさびを少しにしてくれと言ってくれました。

昨今のネット社会において「右派は差別を理屈で肯定する集団」で「左派は反差別を利用する集団」という歪んだ構造が出来上がってしまっている。
右派だろうと左派だろうと「差別」は許してはいけないし、差別を糾弾するにあたって自分のイデオロギーを表明する必要もないだろう。
このことに関しては映画評論家の町山智浩さんのツイートが明快だ。

ここまで明快な町山さんのツイートに対しても、右派左派両派から攻撃が行われているという事は、先述の「右派は差別を理屈で肯定する集団」で「左派は反差別を利用する集団」ということの表れなのかもしれない。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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Posted by ksl-live!