元アナウンサーの窃盗?これで有罪ならもうATMには並べない

政治・社会

銀行やコンビニにある、ATM端末(現金自動預け払い機)を使っている女性

2012年、銀行のATMに置き忘れられた現金6万6千円を持ち去ったとして元RCC(中国放送)のアナウンサー、煙石博さんが窃盗容疑で逮捕・起訴されたが、本人は無罪を主張し長期にわたり裁判で争っている。

この件について、どちらが嘘を言っているのかという問題以前に、十分な証拠がないまま「状況」だけで1、2審ともに有罪判決が出ていることには大きな疑問を感じる。

消去法で犯人にされる

まず、現金を盗まれたとされる女性と煙石さんの主張を比較して、どちらが正しいかは私には判断できない。なんとなくの思いがあってもここで書きべきではないだろう。

煙石さんは広島でラジオを聞いていた人なら誰でもその名を知っているであろう有名人だ。
その煙石さんが、防犯カメラで監視・録画されていることが解りきっているATM付近で現金を持ち去るなど信じがたいのだが、先述の通り双方の主張と検察の主張が食い違っている以上は裁判の経過を見守るしかない。

だが、この裁判においては確実に煙石さんが現金を持ち去ったという証拠はなく、逮捕当初に警察が煙石さんに告げた、「お前は広島銀行大河支店で人が忘れた封筒を盗って、封筒からお金を抜き取り、左手で左胸のポケットにねじこんだ。防犯カメラに証拠が残っている」という内容に合致する映像も存在せず、提出された映像も犯行を行っている様子は確認できなかったという。
参考:http://enseki.noor.jp/?page_id=275

しかし、裁判では「現金を抜き取ることが可能だったのは被告しかいない」ということで1、2審とも有罪判決が言い渡されている。
証拠はないが、他に犯人はいないという理由は理にかなっているように思えるが、そこには大きな落とし穴がある。
弁護側主張では、被害女性が置き忘れた封筒に現金が本当に入っていたか?というポイントで被害女性の証言が変遷しており、その現場では、そもそも窃盗事件が発生していなかった可能性もあるからだ。
これは、被害女性の訴えを否定するかどうかではなく、検察が起訴し裁判で争う根拠となる「現金盗難」の犯行現場が別の場所であったかも知れないということだ。被害女性は他の場所で盗難に遭った可能性もあり、その場合は被害女性が現金を所持していた最後の記憶がATMというだけであって、当該現場を犯行現場と断定することはできない。
その場所で現金を持ち去ることができたのが煙石さんであったとしても、そこで現金の盗難が起きていなかったという可能性が否定できない限り、煙石さんを犯人と断定するのは筋違いではないだろうか?
この事件で被害女性が警察に訴えるのは当然のことではあるが、警察と検察がそれをどう扱うかは別問題。
仮に被害が確認できたとしても、それがどこで発生したかを特定することもできていないのに、ここで盗られたのだろう、この人が盗ったであろう、という状況証拠とも言えないレベルの判断で起訴され、裁判でもそれが支持されていることは異常だ。

これで窃盗犯とされるなら、ATMに並ぶのすらリスクがある。
ATMで利用した封筒に前の人の現金が入っていただの、お金がなくなったのは後ろに並んでいたアイツがネコババしたに違いないとかいう想像の論理で逮捕され有罪となる。
こんな恐ろしいことがあって良いのだろうか?

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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