【検証】リテラのイタコ芸「市原悦子が生前語った安倍政権への怒り」←実際は「安倍政権」と言っていない

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【検証】リテラのイタコ芸「市原悦子が生前語った安倍政権への怒り」←実際は「安倍政権」と言っていない

 女優の市原悦子さんが12日、心不全のため都内の病院で亡くなった。
 こういった著名人の訃報に際し、必ずリテラが行う「イタコ芸」が始まったようです。生前に語ったとされる言説を恣意的に引用し「安倍政権を批判していた」と勝手に死者の思いを語り始めるのです。

 戦争の記憶を後世に語り継ぐこと、戦争童話の朗読だ。市原の戦争をなくしたいという思いは、安倍政権にも向けられた。

 2014年には、集団的自衛権容認や原発政策など安倍政権の政策を厳しく批判したことがある。

「集団的自衛権を使うことが認められましたね。「自衛」とか「戦争の抑止力」とか信じられない」
「先の戦争で犠牲になった300万人の方々がどんな思いで死んでいったか。戦争によって人の心に何が起こったか。それを知れば、私たちがこの先どうすべきか見えてくると思います」
出典:追悼!市原悦子が生前語った安倍政権への怒り、反戦の思い…「戦争をなくすことも女優の大事な仕事」|LITERA/リテラ

 これは朝日新聞2014年7月8日朝刊に掲載された記事の引用であるが、紙面の全文を確認しても「安倍政権」とは一言も書いていないし、市原さんは戦争に反対して政治全般に苦言を呈しているに過ぎない。ご本人が亡くななり、否定されないことをいいことに、途端に政治的主張に利用するリテラお得意の悪質手法である。このフェイクニュースには日刊ゲンダイも釣られたようだが、今回はリテラのフェイクニュースを重点的に検証してみた。

記事には「安倍政権」の文字がない

 朝日新聞の記事は現在、有料会員向けの限定公開となっているが、当時の紙面をアップしているブログが見つかった。
【検証】リテラのイタコ芸「市原悦子が生前語った安倍政権への怒り」←実際は「安倍政権」と言っていない

黙翁日録: (市原悦子『朝日』集団的自衛権を問う)

 この朝日新聞の記事は、市原さんが自発的に声を上げたというわけではなく、2014年6月18から「集団的自衛権を問う」というシリーズ連載が開始され数十人にインタビューしている。[出典]連載開始後、市原さんがインタビューを受ける回の直前に、安倍内閣により集団的自衛権の限定的行使が可能という憲法解釈が閣議決定されたことから「集団的自衛権を使うことが認められましたね。」と言及しているだけで、それに続く言葉は安倍政権ではなく、この国の歴史と政治全般に対する懸念である。

「自衛」とか「戦争の抑止力」とか信じられない。原発事故への対応もあやふやなまま、国は原発を輸出しようとしている。被爆者、水俣病患者を救済しましたか。「国民の命と財産を守る」と言っても空々しい。
 先の戦争で犠牲になった300万人の方々がどんな思いで死んでいったか。戦争によって人の心に何が起こったか。それを知れば、私たちがこの先どうすべきか見えてくると思います。

 抑止力に関する認識は安倍政権という括りではないし、被爆者や水俣病患者への救済も同様である。唯一、安倍政権に直結しそうなのが「原発輸出」であるが、これも当時のことを考えると安倍政権に限定した批判ではない。

原発輸出問題は民主党政権で始まった

マスコミが“安倍政権のトップセールス"と報じていることから勘違いも多いようだが、民主党の菅政権でインドへの原発輸出方針が決まり、福島原発事故後も野田政権でその方針が引き継がれている。

 2010年10月

 菅、ズン両首相が合意した共同声明で、原発2基の建設とレアアース開発で日本をパートナーとすると明記する一方、経済協力として7事業を日本が積極支援すると盛り込んだ。

 2011年10月

 野田佳彦首相は31日、ベトナムのズン首相と会談し、原発輸出を表明する。菅前政権は昨年10月、原発受注の見返りとして、政府の途上国援助(ODA)によるインフラ整備を確約しており、改めて輸出方針を伝える。福島第一原発事故後の輸出再開だけに慎重論も根強く、ODA活用をめぐって議論を呼びそうだ。

出典:asahi.com(朝日新聞社):原発輸出、首相表明へ ベトナム首相と31日首脳会談 – 民主政権

 この計画は2016年11月にベトナムで白紙撤回されているが、なぜか民主党政権でもあったはずの原発の売り込みが、現在では「安倍首相による原発輸出政策」と呼ばれている。2014年に市原さんがインタビューを受けた当時は、前年から展開された安倍外交によるセールスだけが批判されるようになっており、市原さんは安倍政権で始まったと勘違いしているか、もしくは前政権の民主党を含めて「政府」と呼んで批判していたものと思われる。

結論 リテラは話を作っている

 連日絶えることなく、安倍政権の批判を繰り返すリテラであるが、ここまで痛烈に批判するからには根拠を示さなければならない。しかし、今回の記事でも根拠は朝日新聞のインタビューで「集団的自衛権を使うことが認められましたね。」という一言のみで、これにリテラが「怒りをにじませながら」と勝手な創作を付け加え、話の全体が安倍政権批判であったように見せかけ、その創作した「怒り」をタイトルにも加える悪質な印象操作も行っている。繰り返しになるが、朝日新聞のインタビュー記事にはそのような表現は一切ない。

 その年の新語・流行語大賞年間大賞にも選出された「集団的自衛権」を批判しそうな著名人に朝日新聞が仕事として依頼し、市原さんが「集団的自衛権を使うことが認められましたね。」と一言いっただけで、怒りをにじませながら安倍政権を批判していたと。これはもう捏造と言っても過言ではない。書いているライターはアイドルなどの芸能関連記事を中心に執筆しているようだが、この検証で示した簡単な政治的経緯すら調べずに"リテラとその読者が好みそうな記事"に仕立てたのだろう。

 最近、大手メディアで話題の「フェイクニュース検証」に、このリテラも監視対象として加えるべきではないだろうか。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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