「生活保護なめんなジャンパー」なぜ謝罪する必要があったのか?

政治・社会

生活保護の申請に来た男性と女性の生活困窮者とその対応をしている役所の職員のイラスト

神奈川県小田原市の生活保護担当職員らが「保護 なめんな」とエンブレムに記載されたジャンパーを着用していた問題が議論を呼んでいる。バックには英語で「あえて言おう、カスであると!」と機動戦士ガンダムの名セリフを引用したものと思われるプリントもあったという。

ジャンパーにプリントされている文言は総じて「生活保護の不正受給を許さない」という内容で、それ自体に問題はない。では、なぜ市が謝罪しなければいけなかったのだろうか?

市職員を擁護する声も

このニュースに関してはSNSでは小田原市職員を擁護する意見が多く見られる。
その内容のほとんどが、
「不正受給を許さないのは当然」
「クレームは不正受給者だろう」

といった、いかにもネットに転がってそうな安易なものだ。

具体的な意見としては、2007年に生活保護を打ち切られた男が小田原市役所職員3名を刃物で切り付ける事件が発生しており、不法な手段や暴力で生活保護を受給しようという者に屈しないという強い決意で製作されたジャンパーであるというもの。
これに関しては市側も認める事実であり、市民のために働いていた職員が刃物で切り付けられるというショッキングな事件は、職員のモチベーションを下げていたという。
これに対して職員らは、恐怖に負けず気持ちを奮い立たせ「不正受給に立ち向かおう」という強い意志を示した正義感は称賛されるべきだろう。

生活保護を躊躇う市民がどう思うか?

生活保護不正受給を許さない、暴力には屈しないという意思は正しい。ただし、それを善良な市民に突きつけるようなことはあってはならない。
問題となっているのは、このジャンパーを正当な生活保護受給者に対応する際も着用していたことだ。これはジャンパー製作の意図とかけ離れているどころか真逆の行為だ。
不正受給を許さないという意思は、生活保護を受けなければならない市民を守りたいという正義感であったはずだ。それが受給資格のある市民への威圧になってしまっては本末転倒だ。

真面目な人ほど生活保護を受給することに抵抗がある。自分はもう少し頑張れるのではないかと自分を責め、なかなか市への相談に踏み切れない人も多いだろう。そんな市民がこのジャンバーを見たらどう思うだろうか?
生活に困窮し、生活を立て直すには生活保護を受けなければならないケースに合致していても、「今日明日死ぬわけではない」「これは不正受給に当たらないだろうか」と悩ますだけだ。

警察が犯罪撲滅を掲げることとは性質が違う。犯罪者と一般市民は明確に区別でき本人もどちら側にいるかを自覚できる。それに対して生活保護の不正受給に関しては、本人に資格があるにもかかわらず不正受給になるのではないかと不安になって申し出ないケースもある。

ジャンパーを作るに至った経緯と職員の意思は間違っていないが、このジャンバーはいつ誰のために着用するべきか?
そう考えると着用の機会は少ないだろう。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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