デマ？「CCSは鳩山元総理が苫小牧に誘致した」過去の報道と経済産業省の資料を検証してみた結果・・・

2019年2月24日政治・社会

　鳩山由紀夫元首相が、21日に北海道で発生した最大震度6弱の地震を「苫小牧での炭酸ガスの地中貯留実験CCSによる人災」と投稿したことが北海道警によりデマ認定され話題となったが、このCSSを苫小牧に誘致したのが鳩山元首相ではないかという指摘がなされている。

2011年1月6日の道新朝刊では、鳩山氏が、苫小牧CCS実証実験について「極めて実現性が高いところまで来ている。最後の一押しをしたい」と発言したと紹介。約2週間後の同21日の道新には、CCS実用化の地質調査について「今後、苫小牧の重要性が高まると信じる」と誘致を積極支援する意思を示したとある。

— 米重 克洋 (@kyoneshige) February 23, 2019

私は地質学者でないのでCCSと地震の関連性についてコメントする立場にないが、彼がもし地震はCCSに起因する人災だと言うのであれば、今公職になくても当時の自身の政策判断と、その後の姿勢の転換について説明すべき責任があろうと思う。それが無いから唐突で奇妙な印象しかない。

— 米重 克洋 (@kyoneshige) February 23, 2019

根拠とされた魚拓では・・・

　この情報は地震発生から二日後の23日にネット掲示板に投稿され、まとめサイトも取り上げている。決定的な証拠として示されているのが2011年10月11日に北海道新聞と苫小牧民報社に掲載された記事でアーカイブも残っていることだ。

　鳩山由紀夫元首相が１０日、苫小牧市内で二酸化炭素の回収・地下貯留技術（ＣＣＳ）の調査井などを視察した。鳩山氏は、実証試験地は苫小牧に決定するとの確信を示しながら、試験の成功などに大きな期待を寄せた。

　経済産業省の委託を受けて調査している日本ＣＣＳ調査の石井正一社長が施設概要ほか、結果の報告書を来週にも国に提出する予定と説明。報告書を受けて年度内にも試験地が決定される見通しで、鳩山氏は「貯留層はどのくらいの貯留能力があるのか」「地中温度はどのくらいか」などと、興味深げに質問した。

　視察を終えた鳩山氏は報道陣に対し、苫小牧が実証試験地に「選ばれると考えている」との確信を述べながら、「非常に可能性を感じ、期待している。実証試験を成功させねばならない」などと語った。

　この後、苫小牧港・西港の漁港区拡張工事、西港区西埠頭（ふとう）を視察した。
出典：鳩山氏が苫小牧でＣＣＳ調査井などを視察：苫小牧民報社

　確かに意欲的なコメントをしている。しかし、誘致したと取れる文言は見つからない。
　この記事に関しては経済産業省が平成23年に発表した中間評価でも「情報発信の活動実績」として、タイトルのみであるが記録されている。（135ページ）
参考：[PDF]A 二酸化炭素削減技術実証試験＇プロジェクト（ ＇中間評価 – 経済産業省

鳩山視察と同時に胆振地震の可能性を指摘

　この鳩山視察が報じられた同日に「もし苫小牧でCCSを実施したら胆振は震度7の地震で壊滅です。」と巨大地震誘発を警告するツイートを行った人物がいる。
https://twitter.com/you4935/status/123738619876868097

　実際に2018年9月に北海道胆振で巨大地震が発生し、厚真町で最大震度７を記録している。これにより、CCSが地震を引き起こすという話が加速したようだが、そもそも連日のように地震の予言のようなことが行われ"当たるまで言い続ける"ことがカラクリとしてあり、科学的にもCCSの影響は地震を引き起こすには小さすぎると評価されている。

　これを陰謀論と断定するかどうかは別として、当時から反対のあったCCSの実証実験を誘致していたとしたら、どの時点で鳩山氏は反対に転じたのだろうか？
　ツイッターでの懸念表明は今月の2日であり、昨年の胆振地震のときにはCCSについては言及していない。昨年の地震発生以降に発生原因とする指摘を支持するようになったものと思われる。

　このことから、鳩山氏はCCSには賛成だったが最近になって反対に転じたということが見えてくる。しかし、ここでも「誘致した」とする根拠は見つからない。

現時点では誘致の根拠見つからず

　先述の経済産業省の中間評価の冒頭にも掲載されているが、技術の推進自体は小泉政権下でも既に行われていたようだ。しかし、民主党が政権を取るにあたり示したマニフェストで「二酸化炭素25%削減」が掲げられ、政権交代後に鳩山首相が国連気候変動サミットでの演説で温室効果ガス25%削減を約束してしまったことが、CCSの推進を加速させたこともまた事実である。
　こういった経緯から鳩山氏は首相退任後も議員として積極的に環境問題に取り組んでおり、2011年10月のCCS視察に繋がったものと思われる。ただし、視察の時点では苫小牧への誘致は決まっており、鳩山氏の発言は「選ばれると考えている」という表現にとどまっている。自分が誘致するとも誘致したとも言っていないのだ。

　ただし、鳩山氏と言えば「最低でも県外」の前例がある。沖縄県辺野古への移設を閣議決定しながら平気で反対の座り込みに参加してしまう理解不能な部分がある。この件に関しても「誘致したが間違っていた、官僚に騙された」と言い出す可能性もある。
　現時点では「誘致した」という事実は見つからなかったが、この人に限っては状況を一転させる仰天発言を行い明日には「誘致した」という事になるかもしれないので保証はできない。怖すぎるのだ。

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