【現地レポート】安倍元総理銃撃容疑者の供述「岡山市の会場、手荷物検査で近づけず」は勘違い?実際の現場状況と食い違い

マスコミ・報道



 安倍元総理を背後から銃撃し殺害した山上徹也容疑者の供述が報道されている。

 犯行動機は政治的なものではなく宗教団体を巡る恨みを晴らすためと供述し、その内容は事実に則さないネット上の言説を鵜呑みにした感もある。マスコミはこれを検証なしに垂れ流している状態だ。

 容疑者は犯行の前日、自民党の小野田紀美氏を応援するために岡山市を訪れた安倍元総理を付け狙っていたという供述をしているそうだが、実際に現場に居合わせた筆者からすると内容がデタラメで、供述内容が真実であるならば容疑者の思い込みである。

前日「手荷物検査で近づけず」 容疑者、岡山でも安倍氏襲撃計画か | 毎日新聞
(前略)事件前日の7日にも安倍氏が登壇する岡山市の演説会場に入ろうとしたが「手荷物検査などがあって近づけなかった」と供述していることが分かった。(後略)

容疑者供述と食い違う現場状況

 まず、岡山市民会館に入場する際に手荷物検査などはなかった。

 筆者は演説開始1時間半前に会場に到着し、その時間帯には取材者の入場方法などが不明確であったため一般の待機列に並んで待つことにした。この時点で大行列となっており、開場の予定を15分早め午後5時45分から一般入場が始まった。(演説開始は午後7時)それと同時にテレビ局や新聞社が到着し並ばずして入場していったが、急に列を外れて入場するのも気が引けるので「この流れで入場します」と会場スタッフに伝えて受付に向かった。

 まず入り口では体温測定と手の消毒を求められ、その流れで受付に向かい記帳を行い式次第や小野田氏のビラを受け取るルールとなっていた。報道では顔見知りや馴染みの人間以外が記帳したとされるが、すべての人が記帳するか名刺を渡して入場していた。顔パスは自治体議員や首長くらいだろう。筆者は取材者として入場したので、報道専用の受付を案内され、そこで名刺を渡している。この過程で多くの受付スタッフらと挨拶したり、謝辞を述べられたりするので、テロを画策していた容疑者にとっては多数の人に顔を見られ声を掛けられる状況は都合が悪かったのだろう。

 ただ流れに沿って入場するわけではなく、体温測定のタブレットに顔を近づけ、あまり一般的ではない形状の消毒機器の使い方を案内され、そこから記帳台で記入するあいだ多くのスタッフと対面している様子が手荷物検査に見えたの可能性もある。

 また午前中に行われた岸田総理の演説を警備していた岡山県警5名程度が、安倍元総理の会場でも開始1時間半前から行列を監視しており、続々と警察関係者などが集まって来ていたので、容疑者がどこまで接近できたかも疑問が残る。一度行列に並んで長時間待ちながら、入場直前に踵を返せば不審に思われ、警察の印象に残っているはずなのだが。

 会場の中では報道エリアが設けられ、人員などを県連代議士秘書に伝え、それは警察にも報告されていた。機材などの設置や使用状況も監視されていたが、これはこの会場に限ったことではなく、場所や状況によってはカメラ台数の確認や、機材の仕組みなどを聞いてくることもある。

 容疑者が過剰に警戒することなく、平然を装って入場しようと思えば可能であった。記帳も身分証明書と照らし合わせるわけではなく、何を書いても疑われることはない。ただし、安倍元総理を狙える最前列と2列目は自治体議員と首長の指定席で、その後方の1階正面席あたりを確保できたのは、早くから並んでいた地元の支持者だけだった。

 現場に毎日新聞の記者は来ていなかったのかもしれないが、もう少し丁寧な裏取りや聞き取りをしていれば、容疑者の言い分をそのまま流すことも無かっただろう。こういった報道が特定の団体や関係者への憎悪を煽ることにもなりかねず、警察からリークされる容疑者の供述内容については、事実関係の精査をしてから流してほしいものだ。

関連:立憲・山岸一生議員の投稿に批判殺到!安倍元総理銃撃直後に参院選候補者応援を絡めた投稿
関連:小沢一郎「安倍氏のこの災難、むしろ自民党に有利」「自民党の長期政権が招いた事件、おごり高ぶり、勝手なことをやった結果だ」

皆様の支援が必要です KSL-Live!からのお願い

【ご支援をお願いします】取材・調査・検証記事はコピペまとめサイトのような広告収入は期待できません。皆様からの支援が必要です。各種支援方法詳細

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

OFUSEで支援する

このサイトをフォローしよう