再検証!新潟県知事選の拉致否定デマは意図的か?今も拡散されるデマの根源は北川論文を知らない自称保守

政治・社会

再検証!新潟県知事選のデマは意図的?拡散しているのは誰か?拉致否定の北川論文を知らない保守って?

拡散された怪文書

10日に投開票が行われた新潟県知事選は、与党が支持する花角英世氏が野党統一候補の池田千賀子氏とのデットヒートを制し初当選。白熱した選挙戦では、ネット上で両陣営支持者によるデマと中傷合戦が勃発、公職選挙法に抵触する恐れのある悪質なものも双方に見られた。
デマの中でも最も広く拡散されたのが「池田ちかこ候補が"拉致問題は創作された事件"という論文を書いた」というデマだろう。これは拡散が始まった当初に当サイトで緊急調査、デマの発端まで突き止めているが選挙が終わった今でも信じている人が多い。
検証記事:検証!新潟県知事選、池田ちかこ候補は「拉致問題は創作された事件」という論文を執筆・関与したのか?

一部の投稿者が削除とお詫びを掲載し、終息に向かうと思われた時期もあったが、保守系評論家の西村幸祐氏が再拡散したことで爆発的に広がることになる。この件に関して西村幸祐氏は9日の夜になって投稿を撤回しているが、別ルートの拡散もあり選挙への影響は少なからずあったと言わざるを得ない。

しかし、デマの元になった論文は、拉致問題に取り組む人々の間では知らぬ者はいないであろう「北川論文」であり、それを池田千賀子氏が書いたというデマを本気で信じて拡散したとは思えないのだ。拉致問題に取り組む人が忘れることが出来ない屈辱の「北川論文」「田嶋陽子の社民離党」について振り返ってみれば、このデマが意図的に拡散されたことを疑わざるを得ない。

北川論文とはなんだったのか?

まず、このデマの発端は先日の記事でも検証しているが、ある人物が「論文を出した社民党」と伝えたかったところを「論文まで出した社民党の #池田ちかこ」と投稿したことに端を発している。
検証!新潟県知事選、池田ちかこ候補は「北の拉致は創作された事件」という論文を書いたのか?元ネタ判明

これを期に、無知な自称保守アカウントが池田候補への攻撃材料として拡散を始めた。しかし、ここでいう「北川論文」は、1997年に社民党の機関紙に掲載されたもので、拉致問題を「拉致疑惑事件が安企部の脚本、産経の脚色によるデッチあげ事件との疑惑が浮かび上がる」と指摘し、その目的を拉致疑惑事件は、日本政府に北朝鮮への食糧支援をさせないことを狙いとして、最近になって考え出され発表された事件なのである」とした悪名高き論文である。
2002年9月17日の小泉訪朝で金正日総書記(当時)が日本人拉致を認めるまで、社民党が拉致問題を否定していた証拠とされるものだ。小泉訪朝後にこの論文の問題がクローズアップされ、社民党は一旦は「党の公式見解ではない」と居直ったが10月4日にはホームページから同論文を削除している。一連の社民党への批判では拉致被害者家族への冷たい対応や辻元清美議員による「完全無視」もあったという証言があり、特に保守系で拉致問題に取り組む人間でこれを知らない者はいない。
無論、西村幸祐氏が知らないはずがない、むしろ、多くの人が西村幸祐氏ら保守の論客から学んできたのだ。なぜ、その西村幸祐氏がこのような怪文書を拡散したのか不思議でならない。

再検証!新潟県知事選のデマは意図的?拉致問題の基本「拉致を否定する北川論文」「田嶋陽子の社民離党」

西村幸祐氏が拡散した怪文書

※この怪文書に署名されている団体は、このような文書を作成していないとのこと。

余談 ウェブ魚拓はこのためにある

余談であるが、有名な「ウェブ魚拓」は、社民党がこの拉致問題に関する記述を消して逃亡したことに憤った新沼大樹氏が創設したサービスである。
参考:炎上の歴史とともに10周年、あの「ウェブ魚拓」創業者に会ってきた | HRナビ by リクルート

田嶋陽子が激怒して社民を離党

先述の「北川論文」と社民党の見解に関しては、当時、現職国会議員であった田嶋陽子氏が社民党を離党する要因にもなっている。
田嶋陽子氏は社民党の拉致問題に対する姿勢を批判。北朝鮮労働党と社民党が友党関係にあったことにもショックを受け、それを拉致問題解決に活用しない社民党を許せなかったのだ。
これは、田嶋陽子氏に反感を持つ保守にとって不都合な真実でもある。

このことは当時の中央日報(日本版)でも伝えられ、田嶋陽子氏の会見コメントとして「拉致事件に対する党の対応が遅く、柔軟性もない。朝鮮労働党との関係も、事前に説明すべきだった」という内容を掲載している。記事の中では北川論文にも触れられ、土井たか子委員長(当時)が非を認め被害者家族に謝罪したとも伝えられている。
出典:社民党、日本人拉致事件に困惑 | Joongang Ilbo | 中央日報
記事情報提供:ワールドワイドウェブさん

北川論文が問題となり土井たか子委員長が謝罪、著名な論客である田嶋陽子参院議員(当時)が離党するという騒動を、保守を名乗る人たちが知らなかったとは思えない。これこそが拉致問題で社民党や辻元清美議員が批判される決定的な要因であったはずなのに。

だれが今も拡散しているのか?

西村幸祐氏は既に謝罪して撤回しているが、今もデマは流れ続けているが、そもそも西村幸祐氏だけの拡散なら、こんな事態にはならない。
西村幸祐氏に媚びて拡散をした人物がいるのだ。
残っている投稿
再検証!新潟県知事選のデマは意図的?拡散しているのは誰か?拉致否定の北川論文を知らない保守って?

タイトルに「【緊急拡散】西村幸祐氏より」と入れ「即拡散させていただきました」と本人に報告するという媚びに媚びた態度が泣けてくる。

記事は弁護士からの警告を受けて削除しているが、本人に反省の色は見られずツイッター投稿も残しているのだ。この記事が一気にツイッターで拡散され、引用した投稿にはすべてキャッシュから怪文書が表示されている。ツイッターに残っているURLだけでも1500件もあり、削除された投稿も含めると数千件のシェアがあったものと思われる。

西村幸祐氏が謝罪撤回してもこの御仁は謝罪をしない。
弁護士から警告を受けて逃げただけ。

意図的に北川論文を歪曲して池田千賀子氏の選挙を妨害したのか、それとも北川論文を知らなかったのか?どちらにしても救いようがない。
前者であれば公職選挙法などで罰せられる可能性もあるのだが?

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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