検証！立憲・小川淳也議員は本当に「世界市民として、朝鮮学校への支援が必要」と言ったのか？→フェイクニュースが作られる仕組みと本人の優柔不断

2020年11月1日政治・社会

　立憲民主党の小川淳也衆院議員が、有権者からの質問にツイッター動画で答える企画で「世界市民として、朝鮮学校への支援が必要」と発言したとされる問題。まとめサイトが挙って取り上げているが、本当にそのような発言があったのだろうか？
　動画が添付されていたことから、信ぴょう性あるソースのようにみえるが、実際に動画を確認すると該当する発言は「世界市民」の部分だけで、朝鮮学校への支援が必要という発言は確認できない。

#小川淳也千本ノック

⚾????32本目

質問フォームより、”りん”さん

「朝鮮学校の高校無償化の問題についてお考えをお聞きしたいです。」 pic.twitter.com/ziDAOJGMt2

— 小川淳也 (@junyaog) October 29, 2020

朝鮮学校への支援は明確に否定

　動画での小川議員の発言は、どうも煮え切らない優柔不断なもので褒められたものではない。だが、動画内では明確に、学校教育法の学校ではないことと拉致問題などを理由として朝鮮学校への国費での支援を否定している。自治体判断での支援に関しても事例を挙げているだけで肯定も否定もしていない。
　以下書き起こし、

千本ノック、32本目になります。先ほど、31本目で入りきらなかった"りん"さん、朝鮮学校の無償化についてです。これも本当の難しい問題なんですが、あえて私は2年前、北方領土を尋ねました。国後島と色丹島、そこでロシアの子供たち幼稚園児に歌や踊りで迎えられ、そして赤ん坊が昼寝をする様子を拝見し、一緒にちぎり絵で遊び、お茶をたしなんだ。その時に思ったのは、北方領土は返して欲しいです。この主張は日本として、し続けなければならないと思いました。が、そこで生きる子供たちに罪はないなと感じたんですね。で、同じことを実はこれについても感じてまして、朝鮮学校は、いわゆる日本の学校教育法にいう狭義の学校ではありません。したがって教育内容も、背景にある朝鮮総連、そして最終的には本国・母国である北朝鮮の流れを汲んだ独特の教育が行われていると言われています。従って、直接国費で他の日本の学校と同様に支援を講じていくというのは、非常に法的に難しい。また、歴史的背景、そして拉致問題を抱えた両国間の複雑な関係から言うと直接は難しい、という事をよく理解しています。一方で、子供たちには罪はない、という思いもやっぱり感じるんです。ですから、自治体によっては独自の支援をしているというところもあるようですが、最低限の人道的支援、福祉的な環境が国籍や歴史や背景を問わず、子供たちに、いわば世界市民として、この日本国に生きる世界市民として与えられていることが望ましい。この狭間の中で、しっかりもがき苦しんで行きたい、悩んでいきたいと課題だというふうに感じてます。"りん"さん、ありがとうございます。

　国会議員として朝鮮学校の国費投入を否定しながら、一部の層に媚びるように「世界市民」というなんでもありの枠組みに言及してしまうのが小川議員の言葉のセンスのなさだ。また、朝鮮学校への支援を行わないことが、国籍問わず現行で施されている「最低限の人道的支援、福祉的な環境」まで制限されるかのような誤解を生む話し方だ。無論、「最低限の人道的支援、福祉的な環境」に朝鮮学校の無償化が含まれないことは小川議員もわかっていると思うが。

朝鮮学校無償化反対は民主党政権から

　小川議員は前回の衆院選で希望の党から出馬しながら自分だけ共産党からの支援を受けていることから、朝鮮学校無償化を語る場合に共産党のご機嫌を取るような物言いになるのだろう。

　一方で、誤解している人も多いようだが、朝鮮学校無償化への反対論は自民党だけでなく、高校無償化を進めた民主党政権時代にも党内で意見が分かれていた。韓国に融和的な議員が多かった一方で、対北朝鮮に強硬的姿勢の議員も多かったことから、高校無償化に朝鮮学校を入れるか否かは民主党政権では決着がつかず、自民党が政権を奪還してから正式に「朝鮮学校は含まない」と決定している。
　民主党政権時に小川議員が賛成したか反対したかは不明だが、少なくとも今回の動画で「国費で支援できない」というスタンスは明らかだ。その一方で、小川議員が共産党とズブズブであることから、詰められればあっさりと共産党側の意見に転ぶことは否定できないだろう。

なぜ言ってないことが記事に？

　まとめサイトの利用者のほとんどが、中身など確認せずタイトルだけで拡散する傾向にある。動画を見れば小川議員が朝鮮学校への支援に否定的だと分かるのだが、一次ソースに当たる読者も少ないだろう。

　この"言ってもいない"ことを拡散したのが保守速報やツイッター速報、シェアニュースジャパンであるが、実はシェアニュースジャパンはニュースサイトではなく「まとめサイト」である。引用ルールを守らずに、５ｃｈなど匿名掲示板の人気スレッドをコピーして独自記事に見せかけているだけだ。この小川議員の件を取り上げたサイトのタイトルがすべて「世界市民として、朝鮮学校への支援が必要」と間違ったままで統一されているのもコピーが原因だ。
元ネタとなったスレッドの一例
【動画あり】　立憲民主党・小川淳也「世界市民として、朝鮮学校への支援が必要」

　匿名掲示板とは言え、すべてがデマや嘘ではなく貴重な情報源でもある。その一方で、扱う際は確認や裏取りが必要で、最低限は添付された動画や資料は確認するべきだ。これを怠り、いわゆる釣りネタをそのままコピーしてしまった結果、軒並みフェイクニュース判定を受けてしまうのだ。

　一方で近秋のケースは、小川議員の優柔不断な物言いが引き起こした結果ともいえる。もっと明快に説明すればいいものを、朝鮮学校無償化に反対していることで一部の層から叩かれないようオブラートに包む話し方は見苦しい。一連のデマ拡散に「デマだ」と声を上げられないのも、朝鮮学校への支援を求める共産党とそのシンパの票をあてにしているからと邪推してしまう。

　結果的に、こういうやり方は賛成派と反対派の両方から叩かれることになる。

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