政治家とインターネット発信者の適切な距離とは?公職選挙法における注意点と買収が疑われた事例【マガジン212号】

KSLマガジン



 9日に投開票が行われた奈良県知事選挙を巡り、高市早苗安全保障担当大臣が大臣室で撮影されたメッセージをYouTuberに送り、選挙の応援要請を行ったことが話題となっている。

 まず大臣室から選挙に関わる発信をするという軽率さと、そこで言及されたYouTuberが自民党議員への誹謗中傷やデマの発信源となっていたことから、与野党支持者双方から批判の声が上がった。大臣室からのメッセージが地位を利用したか否かは微妙で、その点の違法性を問うのは難しいと思うが、何でもかんでも与党政治家を告発するマニアのような人たちは、街頭演説現場の懸垂幕に大臣の役職名が書かれていたことにまでイチャモンを付けた例もある。

 詳しくは後述するが、大臣からメッセージを受け取り選挙で有利となる動画配信を行ったYouTuberは、インターネットは放送法の適用外だから公職選挙法に抵触しないというトンデモ理論を展開するなど、国政政党を通じて選挙にコミットする基本的知識すら有していないことが伺える。

適切な距離と公職選挙法

 筆者は与野党問わず政治活動や選挙の取材を行っている。言葉の本気度はそれぞれだが取材先で応援を頼まれることもある。明確に依頼された場合は丁重にお断りし、具体性はなくとも暗に応援を頼まれた場合は受け流すようにしている。最近はフリージャーナリストや一部新聞記者で、露骨に特定政党や候補者を支援しているものも見られるが、これを生業とすることは恥ずべきことである。

 応援するなら個人的な活動にとどめるべきで、ジャーナリストとしての活動に絡めればバイアスの塊と揶揄されても文句は言えなくなる。ましてや新聞記者ともあれば会社の看板と地位、機材を使用していれば内規で処分を受けてもおかしくない。

 このあたりの話は個人のポリシーと倫理の問題であるが、公職選挙法でどう扱われるのか考えている人は少ないようだ。捕まらなれば何をやってもいいという認識であれば、氏名タスキを含む文書図画関連の法律をことごとく破っていく共産党を二度と批判できない。

 ちなみに、我々が与野党問わないとは言え、選挙演説や活動を映像に収め公開していることは広義の「報道」であって、こちらに完全に主体性があるので選挙運動とは見做されない。一方で、今回の奈良県知事選のように、依頼や要請があって動画制作し公開した場合は公職選挙法ではどう扱われるのか・・・

 

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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