【解説】小泉進次郎また炎上!渇水の池にポンプ車注水は焼け石に水?→実は重要な作業でした【KSLチャンネル】

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 また小泉進次郎農水大臣が勘違いにより叩かれています。

 小泉大臣は3日、渇水による農作物への影響が懸念される新潟県南魚沼市でのポンプ車による溜池注水を視察し、その様子をXに動画付きで投稿しています。


 これに対してネット上では、溜池の規模に対してポンプ車では間に合わないとして「焼け石に水」「誰も止めなかったのか」と批判する声が上がっています。

ポンプ車注水は重要な作業


 小泉大臣の説明不足でもあるのですが、この溜池へのポンプ車注水はとても重要な作業で、小泉大臣の発案ではなく各自治体が有効な渇水対策として行っているもので、それを視察し必要なら農水省が支援すると言っているわけです。実際に渇水対策としてのポンプ貸し出しなどは仕組みとして整備されているわけです。別にポンプ車で水位を上げ満水にしようという試みではないので、そこを勘違いして批判している人は的外れです。

 このポンプ車注水には大きく分けて二つの意味があって、一つは少量であっても水路を通じて水を流すことで水田が干上がって地割れを起こすことを防ぐためです。地割れを起こすと作物が育たないどころか、雨が降っても水が地中に浸水するようになって貯水されないこともあるので、水位が上がらない量でも多少なりに水を入れておく必要があるわけです。
近くに代替の水源がない地域では特に「恵みの水」として田畑の干上がりと地割れを防ぐ有効な手段とされ、各自治体が行ってる作業です。
焼け石に水とか批判してる人は、少しでも水を入れることの大切さを理解していません。少しでも水を入れなければ干上がるのを待つだけです。

 二つ目の理由は、溜池の保全です。溜池を長期間干上がらせてしまうと、地割れやひび割れ、いわゆる「クラック」が生じてしまいます。クラックは溜池崩壊の原因にもなります。
 また干上がった状態では次に雨が降ったときに効率的かつ安全に貯水することができず、完全に干上がる前にポンプ車などで注水してつないでおく必要があるわけです。乾いた池の底よりも、貯水の上に雨が降ると効率よく水位が上がることは誰でも想像できるでしょう。

江戸時代以前の古いため池

 今回の小泉大臣が視察した溜池では、この保全よりも水田への供給が主目的と思われますが、溜池の多くは江戸時代やそれ以前に作られた人工のものが基礎になっていて、西日本豪雨では多くの溜池が決壊し濁流に流された3歳の子供が亡くなったこともあり「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が施行されました。溜池の多くが老朽化しているものの管理者が不明であったり、放っておくと甚大な被害を出すということが改めて周知されています。
参考:農業用ため池の管理及び保全に関する法律(平成31年法律第17号)について:農林水産省

 こういった事情を知らない人たちが、今回の小泉大臣の視察を批判しているわけですが、子供みたいな計算で「満水にするには何回往復する必要があるか?」など知ったげに言ってるわけですが、満水にすることなど端から目的とされておらず、水位は上がらなくても注水した分は溜池を保全し田畑を多少なりとも潤しているわけです。

 また溜池の地理的条件によって貯水量は違うので、多いところから少ないところへポンプ車で運んだり、井戸水や他の代替水源を確保することは農水省が以前から推奨していることです。ポンプ車が足りなければミキサー車を代用して運搬することも行われています。

圃場への直接注入は揉める

 一部では「直接、圃場にポンプ車で水を入れろ」とか意味不明なことを言ってる人もいますが、なぜ溜池が何百年も存在し貯水管理が行われているかを考えてみましょう。
 我田引水という言葉があるように、水源は争いの源でもあります。溜池からの用水を複数の地域に分岐するときに、その地点で水量に差が生じて揉めることもあったので、水を分配する公平性にはとても気を遣うわけです。そういった事情からすると、どこの圃場からポンプ車を入れるのかで必ず揉め事が起きるわけで、後回しにされた圃場で地割れが起きて作物が育たなかったらどうするのか?解決不能な禍根を残すことになるでしょう。
 そもそも圃場に直接入れようが溜池に入れようが、用意できる水量と必要とされる水量に差はありません。その決まった水量を公平に分配するのが溜池と分水工を通じた用水路の役割なのです。
 一部の地域で圃場に直接注水したようですが、その地域では溜池を干上がらせてしまっているので、もうポンプ車では貯水できない状態です。

 他にも言いたいことはたくさんありますが、溜池の周りに育つ草木や用水路からの田畑にかけての生態系で土壌が強く豊かになっていることを考えると、干ばつにより草木を枯らし生態系を破壊してしまうと、溜池は脆くなってしまいまうことなど。

 とにかく、この少量の水が「恵の水」であることをご理解ください。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
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