参政党支持者が狙われる!?JICAホームタウン陰謀論の正体と自衛隊デマ拡散…中国の思うツボ【KSLチャンネル】

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 参政党支持者の方はご注意ください。

 自称参政党支持者のXアカウントがJICAのアフリカ・ホームタウンを巡り、認定された4つの自治体はすべて自衛隊駐屯地の近くにあるという情報が拡散されています。中国と軍事訓練しているアフリカ諸国が、有事の際に武装蜂起するという妄想投稿を引用したものが、現時点で2万近くもリポストされインプレッションは約260万回となっています。


 JICAのホームタウン問題については、早い段階で参政党の神谷代表が外務省に確認し、相手国の誤情報と誤解であったことを発信していますが、外国人への不安を煽ることでしか愛国心を示せない人たちがデマを拡散し続けているようです。
 このJICAやホームタウンに関する解説は後半で行います。

自衛隊は全国に配備されている


 今回の自衛隊に関するデマですが、陸上自衛隊駐屯地は全国に160か所もあって、離島などを除いて有事対応や災害派遣ですぐに駆け付けることができる体制となっています。要するに、どの自治体を調べても近くに駐屯地など自衛隊関連施設があるわけです。

 投稿者に対しては「市内に駐屯地はなく車で1時間以上かかる距離」などと、恣意的にホームタウン認定の自治体と自衛隊駐屯地を紐付けた投稿に苦言を呈す人も少なくないようです。

 普段から他国からの脅威と国防を語る自称愛国者たちが、我が国の防衛を担う自衛隊の状況を把握もせず、不安だけを煽っているという証左でもあります。陸上だけでなく海上自衛隊や航空自衛隊を含めれば、本土の防衛体制は固く、これを離島にまで拡大して島嶼部防衛を強化しているということも、国防に少しでも興味があれば接することができる情報なんですが。

 ちなみにこれは余談なんですが、全国津々浦々まで自衛隊が配備されていると言っても、実は奈良県だけは自衛隊駐屯地が存在しません。県知事からは配置を求める要望も出ていますが、奈良県は海に面していない内陸県で、京都・大阪・和歌山・三重の駐屯地と距離が近いという事情があるようです。
 もう一つ余談ですが、アフリカ諸国が中国と軍事的に距離を縮めているというのは事実ですが、軍事演習は中国に限ったことではなく、昨年に海上自衛隊が南アフリカと共同訓練しています。何か一つの情報に接しただけで全体を知った気になるのは危険なので辞めましょう。

自衛隊入隊は日本国籍が条件

 今回の投稿者は、自分はただホームタウン認定の自治体と近くの駐屯地を列挙しただけでデマは流していないと言い訳していますが「中国に呼応して、有事の際に武装蜂起してくる可能性がある」と言う投稿を引用しておいて、無理筋の言い訳で呆れてしまいます。
 そもそも武装蜂起する武器はどこで調達するんでしょうか。投稿者は「自衛隊員にするということか?」というリプライへの返信で「自衛隊員になるには、防衛大学校等の専門の学校を卒業しなくてはならないはずですから、外国籍の人が簡単になることはできないでしょう。自衛隊への妨害や攻撃などの危険性が高まるのでは、というのが私の個人的な危惧です」と、さらに酷いデマを流しています。


 まず自衛隊員になるために防衛大学校や専門の学校に通う必要はなく、採用の種目によって大卒程度、高卒程度など試験があるだけで、学歴や資格などの要件は原則としてありません。そもそも特別職の国家公務員なので外国籍は採用されません。ちなみに防衛大学校の学生も自衛隊員で、特別職の国家公務員として給与が支払われるので外国籍では入学できません。
 あたかも頑張ればアフリカ人が自衛隊に入隊できて、自衛隊への妨害や攻撃などの危険性が高まるというデマを流すのは、厳しい規律と訓練で国防に邁進する自衛隊員に失礼です。

JICAと中国「債務の罠」

 JICAを巡っては様々なデマが飛び交い、意味不明な解体論まで出てきています。JICAが主に行うODAはほとんどが有償資金協力と言って利息付きの貸付です。これをばら撒きと批判するのは無知の極みで、日本は資金協力の審査もしっかりしていて回収率はほぼ100%なので利息で少し儲けちゃってるのが現実です。
 回収率がほぼ100%といっても、相手国が政変や紛争など経済状況が悪化した場合は、返済期間を延ばしたり免除することもあります。第二次安倍政権以降は免除が少なくなって回収率が良好なわけですが、それでも一部の免除や猶予を「税金をドブに捨てた」と批判する人がいます。財源には一般会計だけでなく財政投融資も含まれ、利息付きで返済されているため税金が消えていくことはありません。

 日本のODAが優秀な一方で、中国はODAではない闇金のような貸し付けと回収を行っているので、中国の支援で生活や交通のインフラ整備を行った途上国は、返済が滞るとインフラ権益を奪われ、実質の植民地のようにされてしまいます。いわゆる「債務の罠」と言う借金漬けによる支配なわけですが、日本のODAに頼っていれば返済ペースも緩やかで、困窮すれば猶予や免除をしてくれるので安心なわけです。
 このODAを批判してJICAを解体しようという勢力は、世界の途上国を中国の闇金天国にしたいのでしょうか?中国がレアアースなど資源の輸出に制限をかけるなかで、アフリカと友好関係も結ばず中国の独壇場にして、場合によっては中国支配によりアフリカからの資源供給もなくなったら、どうするつもりでしょう。

 今回のホームタウン騒動も、発信の仕方や説明が完璧だっとは思いませんが、ナイジェリア側の誤った発信を鵜呑みにして日本側を叩いた人たちが、誤解と判明した後も見苦しく延々と日本叩きをしているだけです。移民政策ではなかったわけだし、アフリカからの短期的な人材交流と説明されても駄々っ子のように「移民だ!移民だ!」と騒いでいるのは日本人らしくない振る舞いです。
 定着定住と言う部分にもこだわっている人がいますが、あれはJICAの海外協力隊に限った募集であって、隊員は日本国籍者しかなれません。

参政党員はビジネス保守の標的

 資料の読めない人の勘違いと決めつけもありますが、資料を理解したうえでデマを流し不安を煽るビジネス保守も少なくないので気を付けてください。特に参政党支持者の方々は地道な活動と努力で大躍進したことから、その熱量に目を付けたビジネス保守に騙される傾向が強いように思います。今回の自衛隊デマに関しても、多くの参政党支持者が騙されて拡散に寄与してしまっています。こういうところを参政党アンチも利用してくるわけで、情報の取り扱いには注意を払いましょう。

 とにかく参政党の神谷代表が、いち早く外務省に確認して誤解であったことを発信し、そういう誤解を生んでしまった国の政策などに注目するよう呼び掛けているのだから、いつまでもJICA解体だのホームタウン反対だの低レベルな騒ぎに乗っかるのはやめましょう。

 参政党支持者に限ったことではないですが、ODAが利息付き返済の義務がある有償資金協力であることを理解していた人も少なく、闇金みたいな中国が日本の優秀な貸し付け支援を煙たがっていることも知らなかったようです。いくら日本人ファーストだからって、途上国の支援まで打ち切って最終的に困るのは日本人だったりします。資源に乏しい日本が鎖国しても持続も国防も無理なので、世界における日本の立場というものを確固たるものとしつつ、アメリカだけでなく、アフリカなど多様な国と信頼関係を築かなければなりません。

 参政党が批判しているのは「行き過ぎたグローバリズム」であって、外交や海外との経済的交流を完全に絶つことではありません。日本人ファーストといっても、現代社会では日本人だけでは完結できない資源・エネルギー問題や食糧問題もあって、闇雲に外国人批判だけをして孤立していくことは本望ではないでしょう。

 今回の自衛隊に関するデマも含めて、間違った情報を見つけたら、無用な擁護などせず穏当に指摘して健全な言論空間を作りましょう。無理筋擁護でデマを発信し続けるのはカルトの特徴でもあるので、そうはなりたくないと思ったら考えを改めてください。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
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