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コオロギ給食はなぜ炎上したのか？大人にできないことを生徒で試す愚かさと便利なワード「考えるきっかけ」の欺瞞
徳島県の高校で食用コオロギの試食が行われ、将来的な給食への導入が検討されていることが多くの批判を浴び今後の試食を中止せざるを得ない事態となっている。
参考：「子供に食べさせるな」コオロギ粉末給食に苦情殺到 試食2回提供の高校困惑「誤解されている」: J-CAST ニュース
ネット上では昆虫食に関する陰謀論が飛び交い、特定企業への事実無根の誹謗中傷も見られる。今回の高校の事例でも誤解が多いようで、試食は生徒の任意でアレルギーに関する注意も行っていたという。一方で、昆虫食に関連する陰謀論を批判している筆者からしても、指導した教諭の説明には首をかしげる部分が多く、現状での昆虫食採用には賛成できない。
筆者の知る限り純然たる任意ではなく、教育現場でコオロギ食への誘導が行われていたことが判明しており、企業側のコメントからその思惑が見えてくる。
過去の報道を検証、任意とは言えない？
筆者は昆虫に関する専門サイトを運営していたことがあり、今でも昆虫に関する報道など情報収集は継続している。当然ながら昆虫食に関する報道や資料も回ってくるのだが、今回の徳島の高校に関しては炎上する前の報道と炎上後の報道が異なっていることが気になっていた。
昨年この徳島の高校が報道されたときには、給食への採用は「検討」ではなく、「提供、参入」というニュアンスで報じられていた。あくまで任意でコオロギを食べるかどうかは生徒の判断とされているが、2022年6月にNHKが報じた内容によると特別授業として提供企業の社員（広報担当）が講師となって食物科の生徒と調理実習を行っている。
参考：食用コオロギ使った料理の味は？高校生が調理実習 小松島市｜NHK 徳島県のニュース
さらに1回目の試食が行われた2022年11月の報道では、食物科の生徒69名の夏休みの課題に採用されていたことが明かされている。この流れはさすがに純然たる任意とは言えず、教育現場での誘導だ。
参考：国内初、食用コオロギ給食に 食料問題考える契機に 徳島県立小松島西高 / 日本農業新聞
提供企業広報担当による調理実習と夏休み課題について企業側は「こうした下地が、今回の給食導入につながった。さらに採用校を増やしたい」とコメントしており、明らかに任意の枠を超えたアプローチと誘導が行われていることが伺える。
参考：食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、まず徳島で – 日本経済新聞
以上が筆者の把握していた給食へのコオロギ採用の流れであるが、昨年の一連の報道と現在の報道や教諭の説明が一致していると言えるだろうか。学校側を擁護していた人も、この過去の報道を知れば印象がガラリと変わるはずだ。
大人にできないことを子供で試すな
筆者は昆虫食を巡る陰謀論とデマにはうんざりしているのだが、例えば「人類は昆虫を食べてこなかった」という言説も大きな間違いで、中国や東南アジア、アフリカなど世界中でコオロギなどの昆虫は食糧として浸透している。コオロギが妊婦に禁忌というのも、科学的根拠がなく昆虫食が一般的な国で問題が起きていないことを考えればデマとわかる。根拠が漢方薬の解説に書いてあったというのもお粗末すぎて話にならない。
コオロギ食の危険性を食品安全委員会が指摘しているというのもデマで、エビやカニなど他の食品にも共通する注意事項に過ぎないことがわかっている。
参考：「コオロギ食の危険性を食品安全委員会が指摘」はデマだった！専門家が徹底解説「最大のリスクは甲殻類と同様のアレルギー」（SmartFLASH） – Yahoo!ニュース
コオロギよりもイナゴを養殖したほうがいいという意見も散見されるが、イナゴは飛翔性が高く広大な土地が必要で温度管理もコオロギより難しいだろう。そもそも農業害虫であるイナゴを養殖しようなど危険極まりない。日本では駆除目的で捕獲されているのに。
コオロギ反対派が印象操作のために趣味としての昆虫食で使われる姿煮や素揚げの写真を用いるが、実際は乾燥粉末での利用となる。かといって乾燥粉末なら平気かというと、その抵抗感は根強く、これを一般化するのは極めて困難だろう。
この抵抗感を薄めるための活動として、教育現場に食い込んでいこうという企業の姿勢は全く賛同できず、まずは大人が問題なく食べられるようになってから子供に伝えるべきだ。徳島の高校でも食べるかどうかは任意だと説明しながら、生徒は「抵抗があった」とコメントしている。教育の過程だからこそ試食したのであって、これを任意だったと信じ込ませるやり方は感心できない。
教育現場で多用される「考えるきっかけ」というのも便利な言葉で、大人が答えを見つけられない課題を子供で試すときに使われる。大人が不安で抵抗を感じているコオロギ食を、子供たちで試そうなど言語道断であり、やるならまずは大人からだろう。
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