中国が日本のマスクと工場を横取り?→メーカー「全量を日本に向けて輸出している」デマの発信源はモーニングショー
中国に生産拠点を置く日本メーカーのマスクが、中国当局の輸出制限と工場接収で日本に届かないという噂がネットを中心に拡散されているが、どうやらこれはテレビ朝日「モーニングショー」が3月初旬に放送した内容を誤解したことを発端に流されたデマのようだ。
生活用品販売大手のアイリスオーヤマが、中国の工場では間に合わず国内での生産を始めることが報じられた際には「中国の日本企業工場が接収された」「日本向けに製造したものを中共が取り上げた」などという情報が保守系の著名人を中心に拡散された。だが、日経ビジネスの取材ではアイリスオーヤマ(宮城県仙台市)は中国工場での月産8000万枚全量を日本に輸入していると答えている。
日本が中国に輸出してたらどう思う?
中国でのマスク生産について、日経ビジネスでは以下のように報じられている。
国内で大規模な増産に打って出るのが、アイリスオーヤマ(仙台・青葉区)だ。中国の大連や蘇州にある工場では月産8000万枚を製造して全量を日本に向けて輸出している。アイリスの大山健太郎会長はマスク不足を敏感に察知し、国内で生産するための機械を押さえたという。国内では宮城県角田市の工場で生産し、6月をめどに生産を開始して月産6000万枚体制を築く。
出典:マスクはどこへ?生産体制を主要メーカーに聞いた:日経ビジネス電子版
中国で生産する日本のマスクが中国当局に抑えられているという情報は、3月初旬にテレビ朝日「モーニングショー」で放送され、中旬以降は毎日新聞でも報じられている。
参考①:中国で続く日本メーカー製マスクの輸出ストップ!工場を警官が見張り接収 : J-CASTテレビウォッチ
参考②:新型コロナ マスク、なぜ不足? 中国が輸出規制か 太田の販売会社「委託工場に山積み」 /群馬 – 毎日新聞
他のメディアでも同様の情報が報じられていたが、どれも取材先は同じ都内の医療用品販売会社だ。報道内容をよく読むと、この会社は中国に工場を持っているわけではなく「委託」していたようだ。中国での国内需要が高まったことで日本向けの委託契約が履行できていないというのが正しい情報だ。
モーニングショーが委託を「日本製品」と誤って伝えたことが決定的だった。逆に中国からの委託に日本が答えられなくなった時に「中国製品を日本が接収してる」と言われたら堪らないだろう。
不織布の生産は大半が中国製で、国外に向けて輸出する余裕が一時的に無くっていたのは明白で、現在は輸出も再開している。今まで当局が規制をかけていたというのは十分にあり得るが。(中国側は規制を否定している)
なんでも中国を批判したがる人は納得しないかもしれないが、これを日本に置き換えて考えてみよう。もし日本が不織布の生産国で、国内需要に対応できない状況でメーカーが中国からの委託を受けて輸出していたら?おそらく日本の保守系を中心にメーカーバッシングをしたでしょう。実際に自治体が備蓄分を中国に発送したことを未だに批判している。
いずれにしても中国当局が日本の工場とマスクを接収して、それをマスク外交に利用しているというのはデマである。無論、中国の企業が国内で生産したマスクは外交的な取引に利用してくるのは明白で、そこは否定しない。
だが、日本の企業が建てた工場が接収されたなどという荒唐無稽なデマを流しした人、それを信じて拡散した人は反省するべきだ。テレビでは視聴者層に配慮して放送していないが、日本でのマスクの流通量は「不足」ではなく激増しているのが実情で、それを買い占めている高齢者が元凶である。
増産しなくとも買い占めを止めれば足りる。
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