大臣会見が即終了?こども家庭庁不要論が噴出→意外と知らない予算と大臣ポストの真実【KSLチャンネル】

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 三原じゅん子こども政策担当大臣の記者会見が、冒頭発言も質問もなく27秒で終了したことが話題となっていますが、マスコミの不正確な報道やネットでの誤情報で騒いでいる人が多いようです。

 記者会見で質問が無かったことに対して「こど家庭庁は不必要」とういう批判がネット上に溢れ、一部では大臣ポストのために設けられた組織であるかのような話まで流布されています。

 とりあえず、こども家庭庁の是非はそれぞれの考え方もあるので横に置いておくとして、批判するにも正確な情報で批判しないと「ネットのデマ」と一蹴されるだけです。

質問なしは問題ではない


 まず記者会見が27秒で終わった件ですが、大臣の定例会見は毎週火曜日と金曜日の午前に開かれる閣議のあとに行われます。三原大臣の冒頭発言が無かったのは他の大臣でもよくあることです。担務に関する閣議決定が毎回あるわけではなく、こども家庭庁からの発表や大臣公務に関する報告が無かったことが、たまたま重なっただけです。他の大臣も毎回のように冒頭発言を行っているわけではありません。

 記者からの質問が無かったことに関しては頻繁にあるわけではないですが、特別珍しいかといえばそれほどではありません。また、冒頭発言もなかったことから幹事社が基本質問をパスしたので他の社からの質問もないのはおかしな話ではありません。記者も専属ではなく他の省庁担当と掛け持ちしながらで、この日は別の重要案件があって記者が少なかったという証言もあります。

 私のように仕事として記者会見をチェックしている者からすれば、どうしてこれが批判されているのかまったく理解できません。他の大臣会見で同じことが起きているのに、今まで批判されたことはありません、単純に三原大臣を叩きたいだけの人間が、粗探ししているだけのように見えます。

こども家庭庁の大臣?

 もう一点の誤解。
 正確には三原大臣は、こども家庭庁の大臣ではありません。こども家庭庁が発足してできた大臣ポストだと思ってる方が多いようですが、このポストは2003年の小泉内閣で青少年育成と少子化対策の内閣府特命担当大臣として始まり、2005年には少子化と男女共同参画の担当大臣となり、こども家庭庁発足後はこども政策、少子化対策、若者活躍、男女共同参画担当大臣となっています。
 途中、男女共同参画と分離されたり統合されたりしていますが、基本的に20年以上前から存在する大臣ポストであって、こども家庭庁が廃止されたとしても、少子化担当の大臣ポストは必置となるでしょう。

 20年前に猪口邦子さんが大臣だったときに、自身が障害のある子供を育てているのに、予算委員会でこども政策への予算と理解について蓮舫さんから激しく詰られ、唇を震わせながら答弁している動画は皆さんも見たことがあるでしょう。これに対して与謝野馨さんが「蓮舫だけは許せない」と後述していたことも有名な話です。 
 あれが少子化・男女共同参画担当大臣だった時の猪口さんです。その6年後には蓮舫さんが同じ大臣ポストに就任するわけですが、特に成果もなく野田内閣は崩壊します。さらにその10年後に蓮舫さんは同じ少子化対策の担当大臣となった加藤鮎子さんをイビリ倒すわけです。
 このように少子化対策の担当大臣は、こども家庭庁の発足前から歴史があるわけです。

 そもそも、こども家庭庁は内閣府の外局であり他の省庁のように大臣をトップに据えません。単一の組織の長は、こども家庭庁長官であって現在は官僚が担っています。これは、こども家庭庁設置法で定められていることです。
 デジタル庁なども同じ「庁」ですが、こちらは内閣総理大臣を組織の長として、デジタル庁設置法により「デジタル大臣を置く」と定めれているので国務大臣を充てています。
 一方で、こども家庭庁設置法には国務大臣を置くことは定めれていないので、三原大臣は事務を担当しているに過ぎません。そのため、こども家庭庁に関する発表や公務を行っていますが、設置法に基ずく専任の大臣ではありません。

予算規模への誤解

 こども家庭庁そのものに関して批判も多いようですが、その中で予算の規模に関するものが最も多いようです。その予算を直接支援に充てればいいという理屈らしいですが、そもそも、こども家庭庁の予算は直接支援がほとんどで、各省庁がそれぞれ縦割りで行っていた子育て支援政策などを集約して効率化しているので、規模が大きくなったわけではありません。もとから他の省庁で組まれていた予算です。
 予算の内訳も、児童手当や保育所などの支援、育児休業給付、障害児支援、ひとり親家庭への支援などです。厚労省など複数の省庁が行っていたもので、こども家庭庁を廃止したら効率が悪くなって無駄な予算は増加します。
 当然ながら効率が悪くなれば直接給付される金額も少なくなります。


 不正確な情報で批判することほどカッコ悪いこともないので、こういうファクトについては押さえておくべきでしょう。三原大臣への批判も、総裁選で高市さんではなく野田聖子さんを支援したことから始まったもので、自称保守のそういう批判の仕方には高市さんご自身が苦言を呈しています。そもそも三原じゅん子さんが野田聖子さんを支援するのは、自民党内でも既定路線で高市さんの陣営の人たちもわかっていたことです。
 事実に基づかない批判を煽ることを商売にしている自称保守論客も多いので、皆さんはそういうのには与しないように、何が正しいかをしっかりと見極めてください。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
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