【公選法】立憲・白石洋一議員が市長選で花束贈呈、選挙区内寄付に該当しないという解釈は妥当か?

政治・社会

 立憲民主党の白石洋一衆院議員(愛媛3区)が、昨年11月15日投開票の新居浜市長選挙で当選した石川勝行市長婦人に当選祝いの花束を贈呈する動画が当サイトに寄せられた。白石氏は花束を「奥さんに」と指定して渡しているが、市長であれ夫人であれ選挙区内での寄付は公職選挙法で禁止された行為である。

 だが、これには公選法の複雑なカラクリがあり、白石氏本人にも確認したが合法との解釈で処理されているようだ。外形的には禁止された寄付行為にしか見えず、通常は当選祝いで挨拶する場合は何も持参しないのだが(特に投開票日当日は結果前に用意するのもおかしいので)、これが違反にならないと解釈される理由とは何か?

政党支部からでも氏名類推される?

 白石氏は同月に行われた西条市長選でも議員夫人が代理で花束を持参し、後援会長が受け取ったことを当サイトの取材に対して認めている。白石氏に確認したところ、この花束は政党支部(立憲民主党愛媛県第3区総支部)からの支出とのことだ。公選法では政治家個人の名前で選挙区内へ寄付することは禁止されているが、政党支部からの寄付は禁止されていないという解釈があるからだ。

 この解釈について現・立憲民主党の大西健介衆院議員が質問主意書で政府の見解を質している。

公職選挙法第百九十九条の三の「寄付の禁止」に関する質問主意書

 公職選挙法第百九十九条の三は「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。」と定めているが、
一 一般論として、国会議員の秘書が選挙区内の有権者に対し寄附を行い、寄附を受けた者が氏名まではしらなくても、当該国会議員の秘書であることを分かっている場合は、同条に言う「氏名が類推されるような方法」に当たると言えるか。政府の見解を示されたい。
二 一般論として、国会議員本人が氏名を記さず、また、特に名乗ることなく、選挙区内の有権者に対し直接、寄附を行った場合は、同条に言う「氏名が類推されるような方法」に当たると言えるか。政府の見解を示されたい。
三 仮に、政党支部の職員又は秘書が、国会議員の氏名の表示のない政党支部からの寄附を持参することは、直ちに「氏名が類推される方法」によるものと言えないとすれば、政党総支部長たる国会議員は、氏名の表示がなければ金品を有権者に自由に寄附することができることになり、それは、公職選挙法が寄附の禁止を定めたお金のかからない政治・選挙を実現しようとする法の趣旨に反するのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
 右質問する。

 これに対する政府答弁

衆議院議員大西健介君提出公職選挙法第百九十九条の三の「寄付の禁止」に関する質問に対する答弁書

一及び二について
 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第百九十九条の三は、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体が行う寄附について規制しているが、個々の事案が同条の「氏名が類推されるような方法」に該当するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものであり、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。
三について
 「政党総支部長たる国会議員は、氏名の表示がなければ金品を有権者に自由に寄附することができることにな」るとの御指摘の趣旨が必ずしも明らかではないが、政党の支部が行う寄附の規制の在り方については、政党の政治活動の自由に関連する事柄であり、各党各会派において御議論いただくべきものと考えている。

 要するに、大西議員は「政党支部からの寄付が職員又は秘書の持参であれば自由に寄付できるのは法の趣旨に反する」という見解で、それに対して政府は明確な合法・違法の判断は避けたという事だ。

 ここでポイントとなるのが、大西議員だけではないが多くの議員が「政党支部からであっても本人持参は候補者指名を類推できる」として脱法行為であるという認識があることだ。実際に当選祝いで寄付にあたる金品を持参することは避けられている。

 これを許してしまえば、資金力のある政党が選挙区内に寄付を繰り返し地盤強化することも可能で、公職選挙法の趣旨に反した「金のかかる選挙」が横行することになる。この問題に対して日本維新の会では、公職または公職の候補者になろうとするものを除いて、政党支部からであっても選挙区内への寄付を全面的に禁止する法案を提出している。(残念ながら法案は未了)

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出典:法案提出一覧|活動情報|日本維新の会

 このように、政党支部からは寄付ができるとする法の解釈そのものに疑義が生じているのだ。

白石氏のケースに違法性はないのか?

 白石氏からの回答によると、政党支部からの支出とのことだが動画を見る限りは「衆議院議員・白石洋一」としてあいさつに訪れている。いくら政党支部からの支出といっても、それは事務的な内部処理の方法であって受け取った側が「政党支部から」と解釈するのは難しいのではないか?この花束贈呈で「衆議院議員・白石洋一から」と解釈しない人がいるとは思えない。
 本人が持参している以上は、氏名類推どころか明確に「白石氏からの寄付」と受け止められるだろう。当該地域の選挙管理委員会にも確認したが、議員本人が花束を贈呈することは公職選挙法違反となる恐れがあるとのことだった。

 解釈が分かれる以上は「違法」と断定しないが、これはどう考えても「不適切」と言われる行為ではないのか。各党の国会議員がこのケースをどう見るか見解を伺いたいものだ。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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