投票日当日の政党関係者による「棄権防止呼びかけ」は不適切 公選法逃れの言い訳に過ぎない【マガジン109号】
選挙の投票日当日は特定候補や政党への投票呼びかけができません。このことは公職選挙法に明記されているわけですが、一方で投票率アップの活動で特定候補や政党の名前を出さない「棄権防止の呼びかけ」は、それを禁止する法律はありません。正当な政治活動であり、憲法で保証された権利でもある。
ただし、候補者を立てている政党に所属していることが明らかであったり、選挙に関わっていた人物が行う呼びかけについては注意が必要です。どう注意すればいいのか?という質問が飛んできそうですが、結論としては"やらないほうがいい"ということです。
各地の選挙管理委員会によって若干の説明が変わってきますが、筆者が取材してきた経験で政党関係の事務所や選挙に関わった人物による投票日当日の投票呼びかけを"問題なし"とされたことはありません。質問の仕方にもよりますが、ほぼ例外なく「違反となる可能性がある」という回答です。啓発としては多くの選挙管理委員会が以下のような説明をしています。
投票日に○○事務所から「もう投票には行かれましたか」という電話があったけど、選挙違反じゃないの?
告示日から投票日前日までの選挙運動期間中は、候補者、運動員、第三者の区別なく、誰でも電話を利用して特定候補者への投票依頼することができます。 しかし、投票日当日は、選挙運動が禁止されているので、電話による投票依頼は選挙違反となります。また、投票日当日の投票率向上の呼びかけは、選挙管理委員会が行いますので、候補者等が行うことはありません。(これを特定の候補者を支持している人等がすると選挙違反のおそれがあります。)
違反であるが捕まらないという矛盾
こういった違反の疑いのある投票呼びかけをしている政党は「逮捕事例がない」と居直っているようだが、公職選挙法に関する摘発は、推定無罪であるのに選挙活動(または政治活動)を制止することの危険性から、買収など事後に明確な犯意を示す証拠が残るもの以外はほとんど対応しません。公選法違反を見つけて現場警察官に申告しても、全く対応してもらえないのもこういった事情から。
だからといって居直っている政党も、自分たちが最初の逮捕者になる危険性は常に考えておいた方がいい。特定の候補者を当選させる意図をもって「これなら捕まらない」という申し合わせのもとに行う行為がいつまでも放置されると思うなよ、と。
筆者の取材経験では具体的に違反の可能性を説明されたケースもある。