なぜ東京生まれの安倍晋三が「山口県出身総理」で山口生まれの菅直人が掲載されないのか?山口県の総理大臣展めぐり住民監査請求も
東京都で出生した安倍晋三元総理が県の公報で山口県出身総理とされ、山口県で出生し高校卒業まで育った菅直人元総理が掲載されていないことは以前から疑問視されてきた。
これに関してはすでに結論が出ているのだが、またX(旧ツイッター)で話題となっていたので改めてその理由を説明しておくと、単純に歴代総理大臣を公式に発表している官邸で、ホームページで戦前は「出生地」とし戦後は「選挙区」としているからだ。これは2020年に安倍晋三総理(当時)の選挙区が含まれる山口県が『山口県の総理大臣展』を県庁内で開催した際に、政権の宣伝のために菅直人元総理を外しているのではないか?と問題視されたことがあったが、前述の通り官邸の公式発表に準じたものであった。
参考:【歴代総理出身地の不思議】安倍総理「山口県出身」宮澤元総理「広島県出身」→実際はどちらも東京生まれ東京育ち
資料:山口まめ知識・トップ – 山口県ホームページ
資料:(旧)内閣制度と歴代内閣 (新)内閣制度と歴代内閣
また、これらの問題は住民監査請求の提出によって経緯と事実関係が確認されている。
住民監査請求により完全決着
山口県の『山口県の総理大臣展』については、菅直人元総理が除外されていることから、県民感情から見て妥当ではないという理由で公金の支出1,958,000円を知事が県に賠償するよう求めた住民監査請求が提出されている。その結果、首相官邸HPを基準にしたことを妥当と認め、山口県に生じた損害の賠償を求めるとする請求人の主張には理由がないとして住民監査請求を棄却する決定をしている。
令和3年1月8日県報公表分 【令和2年11月11日受付】住民監査報告R030108(R2年11月11日請求)(PDF:342KB)
(前略)
4 監査の結果
3の(2)「監査請求の趣旨」、3の(3)「監査の対象事項」及び3の(4)「監査の実施」を踏まえ、次のとおり判断する。
まず、山口県ゆかりの総理大臣の選定について、請求人は、原則として、出身地を戦前は出生地、戦後は選挙区としている首相官邸ホームページの基準を適用していることは、山口県民の思いからすると公平・公正ではなく恣意的なものであると主張する。
これについて、県は、首相官邸ホームページで公表されている総理大臣の出身地は、前記の原則によるとされているが、公表に当たり、本人に確認をした後に掲載されているため、同ホームページに掲載される出身地は本人の認識と一致しているものであるとする。
一般的に、政府機関のホームページへの掲載事項は、国民の偏見や誤解が生じないよう、必要な注意を払って決定されているものと考えられ、総理大臣展において、紹介する総理大臣を、首相官邸ホームページに記載されている歴代総理大臣の出身地情報に基づき選定した県の判断が、合理性や正当性を欠くとは言えない。
(後略)
菅直人元総理の掲載可否は、この監査請求の趣旨からは若干ブレるかも知れないが、棄却決定の事由として挙げられているなかでポイントとなるのが「公表に当たり、本人に確認をした後に掲載されているため、同ホームページに掲載される出身地は本人の認識と一致しているものであるとする。」という部分だ。
要約すると「菅直人氏本人が東京都出身と認識していた」ということになる。菅直人氏が総理大臣として選挙区表記の慣例を容認し、自身を山口県出身総理として掲載するよう改めていない以上は、官邸ホームページに従って行われた『山口県の総理大臣展』が、県知事の政治的理由で菅直人の名前を外したという事実は認められなかったというわけだ。
廃藩置県以降も幕藩体制の名残もあった戦前とは違い、中央集権により東京に活動拠点を置くことが多くなった戦後は世襲もあって東京都出身総理ばかりになってしまう。そういったことも勘案され、選挙区で出身地を表記するようになったのかもしれない。
最後に余談となるが、2020年に書いた記事でも紹介しているが山口県や広島県出身総理が、地元で一切生活していないというのは不正確で、法律上の決まりではないが原則として国会議員は選挙区に居を構えるのが慣例となっている。安倍元総理も岸田総理も家系として選挙区に縁があるので、それぞれ本宅が山口と広島にある。
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