【緊急警告】選挙の当落予想、ビラ配り→公選法違反だって知ってた?マスコミの情勢調査公表はなぜ許される?【KSLチャンネル】

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 今日は参院選中ということもあって意外と知られていない公選法違反について解説したいと思います。公選法は常識で考えているだけでは知らずに違反となっていることがあるので、どうか最後まで読んでください。

 参院選も中盤の折り返しとなり、新興政党の躍進もあって各陣営が当落線上で熱く激しい戦いを展開しています。熱くなるのはいいんですが、ここに来て公職選挙法違反と思われる事案が散見され、かなりヤバイレベルの違反も見つかっています。

 今回は4点ほど解説します。

当落予想とマスコミ情勢調査


 まず最近流行の「当落予想の公開」です。YouTubeでも多くの政治系チャンネルがこれをやってますが、実はこれ公選法で禁止されています。
意外と知られていないんですが公選法には「人気投票の公表の禁止」というものがあります。

第百三十八条の三 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

 こう規定されています。分かりやすい例としては、SNSの投票機能を使って候補者や政党の支持アンケートを行っているアカウントがありますが、あれは完全に違法です。経過も公開され結果も誰でも見れる状態となっているので、人気投票の公表の禁止に抵触します。


 また最近は独自の調査やデータによって当落予測や議席予測を数値付きで公表している人が散見されますが、これも人気投票結果の類と解される危険性があります。先ほど読み上げた条文を確認して欲しいのですが、人気投票や情勢調査をすることが禁止されているのではなく、その経過と結果を公表することが禁止されているわけです。


 要するに調査の手法を問われるわけではなく、経過と結果の公表が禁止されているのであって、それがあくまで個人の予想であるという言い訳は通用しない可能性が高いのです。

 ここで、マスコミが掲載している情勢調査の結果は許さるのか?という疑問がわく人も多いでしょう。これも度々問題視され質問主意書を提出してる議員もいたわけですが、政府の見解としては報道の自由が優先されるということです。さらに、単に情勢調査の数字ではなく「先行」「追い上げ」や「〇△」のマークを掲載しているだけで、調査の結果ではないという見方もできます。
参考:衆議院議員初鹿明博君提出選挙期間中の情勢調査の公表記事に関する質問に対する答弁書
過去に毎日新聞が%で情勢調査結果を公表して問題視されましたが、さすがにこれはやり過ぎということで、現在はどこのメディアも数字関連は公開しないようにしています。

 また、これらは報道の自由によって許されているわけであって、一般個人が趣味程度でやっている当落予想が報道として認められるかと言えば難しいのではないかと思います。とにかく当落予想で数字を公開するのはやめましょう。

ビラ配りには制限ばかり

 次にビラ配りの違反です。

 実は各候補者陣営が証紙を貼って配る選挙ビラは、選挙事務所か演説現場でしか配ることができません。あとは新聞折込はよくてポスティングはダメ。
これ誰も守ってませんね。明らかに法律がおかしいので。
 証紙を貼ることで量的制限をかけているんだから、場所や配布方法を制限しなくても財力や人海戦術で有利に働くこともないのに、どうしてこんな意味不明な制限をかけているのか理解できません。
 演説現場での配布も広範囲に配っていいわけではなく、そこに集まった人たちに配れるだけで、いわゆる「撒く」という形で無作為には配れないんです。選挙動画では定番の、候補者が田畑のあぜ道を走ってビラを手渡したり、田舎の坂を駆け上がって老人にビラを手渡すやつ、全部違反です。
 でも演説現場以外でみんな配ってますよね。こんな法律はさっさと改正して欲しいです。ほんとばかばかしい。

選挙カーは演説禁止

 次は移動演説です。

 公選法では車上の選挙運動の禁止という規定があります。

(車上の選挙運動の禁止)
第百四十一条の三 何人も、第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない。ただし、停止した自動車の上において選挙運動のための演説をすること及び第百四十条の二第一項ただし書の規定により自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすることは、この限りでない。

 ちょっとわかりにくい条文ですが、要するに走行中の選挙カーでは連呼行為のみ許されるので、走行中は演説ができないわけです。選挙カーが名前の連呼しかしないのも、法律でそれしか認められていないからです。
 どの程度が演説と解されるかによって解釈は変わりますが、名前とプロフィール程度の短いフレーズは演説ではなく連呼行為として認められると思います。今回は某政党の新人が対立候補の批判を走行中の選挙カーで行う動画をSNSにアップしてますが、これは完全にアウトです。



 よくある誤解で、商店街などを練り歩くときにマイクを使っているから禁止された移動演説だという指摘をする人がいますが、これは短いフレーズで候補者本人が来ていることを呼び掛ける程度のものなら、演説ではないので問題ありません。途中、立ち止まって演説標旗を掲げ言論による活動をしていれば証紙ビラも配れます。あくまで立ち止まって演説中ということが条件ですが、これを知らずに、違反だと騒ぐのは恥ずかしいのでやめましょう。
参考:選挙中の練り歩き「桃太郎」は公選法違反?誤った認識が横行しているので解説します【マガジン227号】
いずれにしても、走行中の選挙カーでベラベラしゃべってるのは違反なので気を付けましょう。

公平性欠く選挙割りは買収

 そして最後になりますが、特定候補や政党への投票を条件として、有価物を配ったり事業者が割引サービスを提供することです。
某政党を支持するホストクラブが、投票証明書と引き換えに無料券を配布するという投稿をSNSで行い、そこに表示された投票方法の説明に政党と候補者の名前が記載されていて問題となっています。
 これは特定政党への投票を条件とした買収の疑いがあります。実際には投票証明書に投票先が記載されていないので、明確な買収は成立しにくいのかもしれませんが、特定政党への支持を表明し記載例にもその政党と候補者の名前があったので、対価をもって投票を誘導したという誹りは免れません。
 この投稿はすでに削除されてますが、大量にスクショが出回っており選挙後に司法の判断に委ねられることになるかもしれません。

 他にも気を付けてほしい公選法はたくさんあるのですが、とりあえず今回の選挙で散見され無知による違反かな?と思った点は以上です。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
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