SNSでの公選法違反はなぜ検挙されないのか?現職国会議員による悪質事例もお咎めなしの過去【マガジン205号】

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 10代女性を支援する団体『Colabo』の代表である仁藤夢乃氏が、2021年の衆院選前にツイッターに投稿した内容が公職選挙法で禁止されている事前運動にあたるのではないかという指摘が暇空茜氏からなされ、それに対して警視庁や公安委員会がフォロワー数などを理由に検挙に消極的である見解を示したことが話題となっている。

 結論からいうと警視庁や公安委員会の見解はデタラメで、私の選挙取材経験でもこんな話は聞いたことがありません。フォロワー数など選挙人に対しての拡散がどれほどあったかは関係なく、当選を得るため(得させるため)なら1票でも違反は違反です。この理屈でいくと票が得られず落選した候補の摘発はできないはずなのですが、同様のケースではなくとも別の公選法違反では落選者が摘発されることが多い。また、事前運動の影響の度合いなどは起訴するかどうかの判断や最終的な判決には関わるかもしれませんが、それをもって警察が消極的な見解を示してよい理由にはなりません。

仁藤氏の投稿は事前運動か?

 一方で、仁藤氏の投稿が事前運動に当たるかどうかと言えば、これはまた微妙な話になります。基本的には準備行為や組織内での動きではない外部に向けて当選を得させるための行為は事前運動と言えるのですが、各地の選管に取材した経験からすると「選挙名」「候補者名」「明確に投票を依頼する文言」という3点セットが問題視されるようです。仁藤氏の投稿は共産党候補の当選を望んではいるが、明確に得票は呼びかけていません。他党を含め選挙期間外に行われる認められた政治活動とのバランスを考えても仁藤氏の投稿が逸脱しているとも言えません。
※候補予定者ではなく「候補者」と書いてるのはそこそこヤバイ
 ようするに、選挙に向けて各党と支持者が「〇〇さんに当選してほしい」という思いを表明することは普通に行われており、仮にこれが投票依頼と指摘されたところで可罰的違法性があると判断するのは困難で、警察が動けば政治活動の自由を侵害することにもなりかねません。公選法違反に関しては買収や文書送付など可罰的違法性、はっきり言えば起訴や有罪の可能性が極めて高いもの以外は警察は見て見ぬ振りをするのです。

 むしろ仁藤氏の投稿そのものよりも、引用先のハッシュタグなどが事前運動と解される可能性が高く、その引用込みで考えれば仁藤氏の投稿は不適切だったと言えるかも知れません。

 これらの見解は各地の選管が特定事案を想定しないことを条件に、非公式に話すものであって警察に関してもほぼ同じ見解と思われます。それだけに暇空氏に対して示した警視庁と公安委員会の見解は目を疑うような異常なものと言えるでしょう。

 ちなみに政治家が地元で行う活動に対しても「事前運動ではないのか」という指摘をする方がいますが、投票の依頼をしない限り認められた政治活動であり、地盤培養は事前運動ではありません。

 とにかく公選法違反というのは買収や文書送付など「誰が見ても有罪だろう」というケース以外はほとんど摘発されません。共産党などは警告は受けても摘発はされないという範囲であれば、堂々と違反してしまうのでネットでは順法精神のなさを指摘され、それで叩かれてるのは当然です。

 

悪質でも罰せられなかった前例

 事前運動ではないのですが、同じく選挙期間外の運動として投票日当日の投票呼びかけが公選法違反として指摘されることがあります。こちらに関しては事前運動よりも厳しい対応がなされるようですが、過去に現職国会議員が明確にアウトな投稿をしたが罰せられなかった事例がある。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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