検証!山本太郎は「障害者議員で牛歩戦術をやる」という趣旨の発言をしたのか?→今回も政治知新のフェイクニュース

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検証!山本太郎は「障害者議員で牛歩戦術をやる」という趣旨の発言をしたのか?→今回も政治知新のフェイクニュース

 政治ニュースサイトの「政治知新」が8日に配信した記事『山本太郎「障がい者議員で牛歩戦術をやります!」という趣旨の最低発言。そして、れいわ新撰組として当選した以上、障がい者も権力者であり、税金の私的利用は禁じられるべき。』がまるで真実であるかのようにネット上で拡散されている。

 記事の中身を読んだ人なら気が付いたと思うが、れいわ新選組の山本太郎代表が「障害者議員で牛歩戦術をやる」という趣旨の発言をしたという事実はなく、出典とされる現代ビジネスのインタビュー記事にも該当するコメントは一切確認できない。
 障害者をネタにした悪質なフェイクニュースである。相変わらず政治についても無知蒙昧で、委員会と本会議の違いすら理解していないようなので山本代表の実際のコメントともに以下に解説しておく。

出典元に該当する発言がない

 政治知新が出典元とした現代ビジネスの該当部分が以下、

舩後さんの場合、事前に予定していない言葉のやりとりは文字盤を使うことになるし、それには当然時間もかかる。でも、舩後さんが何を言いたいのかわかるまで、他の議員がじっと待つということも、障害者への合理的配慮に含まれるはずです。

それこそが、国会に重度障害者が入るということの意味なんです。

これまで、『国会議員は健常者である』という前提で作られてきた国会審議のリズムやペースを、これからは2人に合わせていくのが当然になると思うんですね。法案を急いで審議して無理やり通す、というようなことも、もうできなくなる。スローダウンするしかない」
出典:山本太郎語る「れいわ新選組が、重度障害者を国会に送り込んだ理由」(時任 兼作) | 現代ビジネス | 講談社(2/5)

 これをどう読めば「障害者議員で牛歩戦術をやる」となるのか?舩後議員が文字盤を使ってやり取りすることに焦らずスローダウンして審議してほしいと言っているだけだ。
 現代ビジネスの続きにはこうも書いてある。

第二次安倍政権下では、数々の法案がいわゆる「強行採決」によって通されてきた。しかし2人の重度障害者の存在が、国会のしくみや採決のあり方そのものを根本的に変えてしまうかもしれない、と山本は言う。

 その強行採決時で誰よりも大暴れしていた山本太郎氏がそれを言うかというツッコミを入れたくなるが、障害者が委員会に参加することを契機に審議をすっ飛ばして強行採決したり、揉み合いで採決するスタイルを変えていこうと言っているだけだ。

委員会と本会議の違いを知らない

 舩後議員が所属する参議院では本会議で押しボタン式の採決も採用されている。しかし、出席議員の5分の1が要求すれば氏名が記載された木札を議員が壇上で投じる「記名投票」が行われる。筆者は正直、これを悪用し舩後議員や木村議員に事実上の牛歩戦術をやらせるのではないかと心配していたが、両議員には代理の投票や代理人の挙手による投票が認められ、そのような心配はなくなった。

 政治知新が勘違いしているのは、この牛歩戦術というのは「本会議」で行われる記名投票の際に行われるもので、山本代表が言及したいわゆる「強行採決」とは本会議のより前の「委員会」での騒乱である。委員会では趣旨説明→質疑→討論→採決の流れとなるが、採決は起立(または挙手)による多数決で行われるので多数を占める与党と賛成側の判断がほぼ確実に「多数」となる。反対する野党側が審議不十分として継続を望んでも与党側のタイミングで採決に入る際の揉み合いを「強行採決」と呼ぶのだ。
 この強行採決を阻止するために野党議員らは委員長に飛び掛かりマイクと書類を奪い採決を無効にしようとするのだ。時には委員長を委員長室に監禁して委員会を再開させないという手法も用いられるが、政治知新はこういった基本知識がないので委員会で牛歩戦術が用いられると勘違いしているのだ。
 よって、山本太郎代表が「障害者を使って牛歩戦術する」という趣旨の発言はありえない。意図的なフェイクニュースと断じて差し支えないだろう。

選ばれた議員に平等な発言機会を

 山本太郎代表が障害者を利用して政治主張を通そうとしているという批判はあって当然だろう。他者を慮るきっかけに「障害者に配慮する」という主張は取りようによっては政治利用だろう。しかし、これまでの健常者が登院するという前提で、大声をあげて審議を妨害したり腕力に任せて取っ組み合いで採決が行われるのも"きっかけ"がなければ変わらない。それぞれに様々な言い分があるだろうが、山本太郎への比例投票が舩後氏の当選につながることを承知の上で多くの得票を得た以上、間違いなく舩後氏は有権者に選ばれた国会議員である。その選ばれた議員が障害を理由に発言機会が失われることなどあってはならないことだ。

 今回の政治知新のフェイクニュースは、障害を持つ国会議員のケアを公費負担とするか自己負担とするか、または党費負担とするかという議論を有利に進めようとする政治的な意図を感じるものだ。タイトルでセンセーショナルにぶち上げておいて、記事の大半が「公金の利用」に関するもので、最後に唐突に問題のフェイクが登場する不自然な構成でもある。

 政治知新は過去にも数々のフェイクニュースを垂れ流し、参院選前には共産党の吉良よし子議員への重大な名誉棄損記事も配信している。もう政治ニュースからは撤退したほうがいい。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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