参政党の勢いは本物か?ネットに留まらない街宣での圧倒的な聴衆人気、一般有権者の反応も上々ではあるが・・・【マガジン177号】
※本記事は6日に執筆し、7日の取材部分を追記したものです。7日夜に安倍晋三元総理の岡山入りを取材しましたが8日に銃撃され17時3分に死亡が確認されました。事件前に書いたもので選挙活動の平時継続を前提とした内容ですが、テロによる言論封殺に抗うためそのまま公開することとしました。
国政初挑戦の政治団体「参政党」の勢いが参院選公示後も上昇する一方だ。ボードメンバーが来援する街宣では、支持母体を持つ既存政党をも圧倒する聴衆の数で、同日同場所で行われた岸田総理の動員数を上回るほどになっている。
党員数も既存国政政党を凌駕するまでに急成長し、メディアも議席を持たない諸派だからと無視できなくなっている。注目を集める一方で、他の政治団体から攻撃の的にされ、一部ではカルト扱いまでされている。筆者も以前は参政党には懐疑的であったが、公示前に2度ほど現場取材をした結果、その認識を改めざるえなかった。
これまでボードメンバーや予定候補者らの発言ばかりがクローズアップされてきたが、実際の街宣現場に集まる聴衆は熱狂的支持者ばかりではなく、既存政党に絶望したり自分にマッチする政党がなく投票を棄権していた人たちが、参政党がその受け皿になりえるか興味を持って意見をぶつけに来ている。必ずしも主要メンバーの主義主張に追随しているわけではなく、意見を持ち寄ってより良い政党を作り上げようという姿勢に一縷の望みをかけて足を運ぶ人たちに参加を呼びかけており、カルト的に誰かを信奉している集団でもない。
大規模街宣以外の様子はどうか?
筆者は参院選公示後に岡山と広島で参政党を取材した。
岡山県選挙区では4日にボードメンバーで共同代表の松田学氏(比例代表)が高野由里子氏(岡山選挙区)とともに街頭演説を行った。筆者が取材した倉敷市では100名以上の聴衆が集まったが、前後に岡山街宣を挟み天候不良の影響もあり、これでも参政党としては少ないくらいだ。
参政党と言えばどうしてもコロナワクチンに関することが取り沙汰されるが、聴衆から質問で目立つのは国防と経済に関する懸念だ。反ワクチン団体「神真都Q」などと同一視する記事を書いているジャーナリストやライターも散見されるが、現場を見ていないか一部を切り取る気満々で取材しているのだろう。
それぞれが多様な意見を持っており、その意見を聞いてくれることが急速に党員が増えている要因なのだろう。一部で批判されているようなカルトであれば絶対に異なる意見を認めることが無いのだが、そういった場面や言説に接したことはない。
さらに7日に2カ所のスポット演説を取材したが、応援弁士を招かない小さな駅でもSNS告知を見て駆け付ける支持者が見られた。何かと組織動員に頼って自己満足している既存の政党との違いは歴然だ。
広島県選挙区では5日に尾道市と福山市で浅井ちはる氏の活動を取材した。
尾道市では商店街を練り歩く「桃太郎」を行い、郵便局前で演説を行った。スポットということもあり多くの人が集まるわけでもないが、支持母体を持たず動員ができない政治団体に興味を持って複数人が集まること自体が珍しい。ちなみに労働組合を支持母体に持つ某国政政党の候補者であっても、動員のないスポット街宣で聴衆ゼロという悲しい風景をこれまで何度も見てきた。
支持者ではないが足を止めた男性に話を聞くと、ネットで参政党のことは認知しているようでボードメンバーの名前なども知っており普通に話しが通じた。野党第一党の名前を知らない人でも、ネットを使っていれば参政党の名前は自然に目に入る状況になっているのかもしれない。
福山市では駅前広場で街宣を行ったが、選挙活動には参加していない党員らも現場で合流した。聴衆は最大で20名ほどだったが、ビラを受け取った人が興味を持って聴衆に加わるという他では見られない光景も見られた。以前から参政党はビラやポスターのデザインが秀逸であると評判だったが、既存政党特有の強く勇ましいメッセージではなく、自然に興味を持たせる工夫がされているからだろう。
後半は党員やサポーターが「なぜ参政党に入ったのか?」をテーマにリレースピーチを行ったが、その理由もそれぞれであった。次々と党員やサポーターが飛び込みで名乗りを上げ予定時間を大幅に超えたが、このように「参加しよう」という意識が強いのも参政党の特徴だ。
これからの課題は地上戦とドブ板
参政党は急速に成長し党員数は8万人を超えているが、サポーターを含めるとかなりの数になる。だが、比例で1議席獲得するだけでこの10倍程度の得票を必要とする。議席数で国政政党の要件を満たすとすれば5議席必要で、党員とサポーターの数をいくら増やしても遠く及ばない。
※得票2%での政党要件の方が近い
参政党が得意とするネットを使った空中戦はこれからも継続して行う必要があるが、街頭に多くの支持者を集め続けても得票の純増にはつながっていないのが現実であり、これからの課題となるだろう。
急な候補者の擁立が相次ぎ、地盤培養はほぼできておらず本戦での動きを見ても街宣の聴衆の数に一喜一憂していることは否めない。支持者をいくら集めても既に投票先を参政党に決めた人たちであり、実は票はほとんど増えていないのだ。支持者の集会はあくまで決起集会的な効果であって、大組織の動員を得ていない参政党が選挙区当選するためには徹底したドブ板と地上戦が必須だ。