検証「産経・FNN合同世論調査捏造「日本テレネット」辻元清美ら野党大物政治家に献金」→名誉棄損記事の疑い

マスコミ・報道

 FNNと産経新聞の世論調査に架空のアンケート結果が入力されていた問題で、業務を再委託され社員が不正を行っていた「日本テレネット株式会社」に関する以下のような記事が拡散されている。
参考:産経・FNN合同世論調査を捏造していた「日本テレネット」 辻元清美ら野党大物政治家に献金していたことが発覚〜ネットの反応「これ世論調査会社じゃなくて世論工作機関だろw」「産経の世論調査って内閣支持率が妙に低くて立憲支持率が異様に高かったんだよな」 | アノニマス ポスト

 ぱっと見でもう名誉棄損が確定しそうな記事なのですが、辻元清美・前原誠司・福山哲郎の野党3議員に同社会長が献金していることを根拠として「これ世論調査会社じゃなくて世論工作機関だろw」とタイトルと記事内コメントに記述されている。

 野党さえ叩ければ民間の特定個人まで貶めるという悪質極まりない行為。以下に本件を解説するが「自分はリツイートしただけ」という言い訳が通用しなくなっていることは過去の判例でも明白なので取り消したうえで謝罪なり誠意ある行動を望む。

献金は少額で個人によるもの

 まず同社会長の献金の事実ですが、当方でざっと調べた結果は以下の通り。(当方で確認できたものであり全てではありません)

前原誠司衆院議員(京都2区)
2012年 1万円「まえはら誠司後援会連合会」
2014年 1万円「新緑会」
2015年 1万円「新緑会」
2016年 3万円「新緑会」
2016年 3万円「新緑会」

辻元清美衆院議員(大阪10区)
2012年 5万円「つじもとネット」
2014年 5万円「つじもとネット」
2017年 3万円「つじもとネット」
2017年 5万円「つじもとネット」

福山哲郎参院議員(京都府)
2014年 5万円「福山哲郎後援会」

 いずれの少額献金で、対象議員は同社のある京都と近隣の大阪という"お付き合い"程度のものだ。
 上記に列挙した団体には他にも多くの企業の役員が献金しており、特定企業との関係性を示す材料にはならない。今回の調査不正問題とこの程度の少額献金を結び付けるには無理がある。

 何より決定的なのは金の流れが「逆」であること。野党議員から金が渡っていたのなら不正との関与も疑われるが、会長が献金をして企業が野党議員のために調査を操作するというのは考えにくい。
 同社会長は過去に自身が主催する塾に講師として福山哲郎議員を招くなどしており、会長が個人的に分裂前の民進党(民主党)を応援していたのだろうが、それを理由に「不正」とするのは飛躍し過ぎた発想で、同社と野党議員の利害関係もまったく見えてこない。

日本テレネットは与党も顧客

 問題となっている日本テレネットは議員事務所などにFAX・通信サービスなども提供しており、政治資金収支報告書に利用料金が掲載されている。当然ながら取引する顧客は与野党問わない。与党議員では西村康稔議員、甘利明議員などが支部長を務める選挙区支部にも同様のFAX・通信のサービスが提供され年間で数十万円が計上されている。

 またホームページには第1次安倍改造内閣で総務大臣を務め、2016年の都知事選では小池百合子の対抗馬として与党の推薦を受けた増田寛也氏が対談で登場している。対談は同社の提案が採用され京都府知事に認可された「Smart Life 研究所」のものであるが、与党を不当に貶めるような企業であれば、安倍内閣で大臣を務めた人物を起用しないだろう。
参考:スマートライフ研究所 | SMART LIFE RESEARCH INSTITUTE

 さらに、国立国会図書館のデータベースで検索すると、政府絡みの事業や提案が多数ヒットする。当たり前の話であるが、同社のようなサービスを提供する事業者が政治的に対立する一方に肩入れできるほど商売は甘くない。野党に利する不正を行うメリットは何もない。

まとめ アノニマスポストの悪意

 過去に少額の政治献金をしていたというだけで、野党に利する不正を裏付ける証拠は提示されていない。そもそも野党側から同社関係者に金銭が渡ったわけでもなく、同社会長が民主党系を個人的に応援していたとしても、世論調査で不正をして誰がメリットを受けるのかも不明。

 世論調査を見てもFNN・産経の数値が極端に他社と乖離していたというデータもなく、ネットでの感覚的な噂に過ぎない。強いて言えば維新の支持率が急伸し立憲が抜かれたという世論調査結果が目立ったが、これこそ立憲にとっては不利なもので野党に利する不正の疑いとは反する結果だ。また、献金を受けた前原誠司衆院議員は国民民主党であるが、世論調査の結果を論じるに値しない低支持率である。

 説明なく政治資金収支報告書をツイッターにアップしたDappi氏にも問題があるが、そこにぶら下がる名誉棄損コメントを集めて「世論調査会社じゃなくて世論工作機関」としてしまったアノニマスポストにこそ説明責任があるだろう。
 薄い根拠で大きな疑いをかけ、その説明責任を疑われた側に負わせる野党のやり方を日頃から批判しておいて、自分がかけた謂れなき疑いに対しては立証責任から逃げるのは矛盾している。明らかな名誉棄損記事であり、早急に撤回し掲載に至った経緯を説明するべきだ。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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