岸田総理「河野談話の見直し考えていない」→これを批判している人は安倍政権でのスタンスと苦労を知らない

政治・社会



 岸田文雄総理が9日の衆議院本会議で、慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた河野談話について「見直すことは考えていない」と述べたことにSNS上で批判の声が上がっている。

 河野談話について歴史的検証の観点から否定するのは当然のことであるが、保守を自称する界隈がこの問題で岸田総理個人を批判していることは全く理解できない。こういう人たちこそ歴史を学んだ方がいいのではないだろう。それもここ10年ほどの浅い歴史についてだ。

 岸田総理を批判する層の多くが「高市早苗を総理に」と今の高市氏の立場からしたら迷惑でしかない運動を展開しているが、その高市氏を将来的に総理に押し上げるであろう安倍晋三元総理が、第2次政権の8年近い任期で河野談話を見直さなかった、または見直せなかったという現実を直視したほうがいい。

安倍政権では「見直さない」だった

 まず事実関係から述べると、第1次安倍政権では河野談話の内容を検討し直す閣議決定が行われている。だが政権が短期で終わったこともあり結果的に見直しは行われなかった。第2次安倍政権でも菅義偉官房長官(当時)の発言などから、見直しが行われるのではないかと話題になったがすぐに長官がそれを否定し、その翌年には参院予算委員会で安倍総理(当時)自身が「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言し、歴代内閣の認識を引き継いでいく考えを示している。

 第2次安倍政権への圧倒的な支持、カリスマ性をもってしても、河野談話の見直しについて問われ「見直す」とは発信することはできず、岸田総理と同じように「安倍内閣で見直すことは考えていない」と否定しているのだ。しかもこれは日韓合意の前の話だ。

 岸田総理はこの安倍政権・菅政権の考えを踏襲することを表明したまでだ。また日韓合意で「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と韓国外相とともに表明したのは安倍政権当時の岸田文雄外務大臣である。韓国側が約束を守らないからといっても、日本側は「最終的かつ不可逆的に解決」とするスタンスは崩していない。河野談話については何とか見直すことはできないかと願う気持ちは同じだが、今の段階でそれを政府が明言すれば韓国側は日韓合意を正式に破棄できるものと勘違いして、再検証の過程でさらなる日本への批判を強め賠償も求めてくるだろう。

 とにかく一方的な主張を展開し、日韓合意すら守らない韓国に対して「相手にしない」という構えを見せた安倍・菅政権の対応は間違っておらず、それを岸田政権でも踏襲し、河野談話を外交問題として取り上げ韓国との新たな合意など得るつもりはないということだ。これがベストとは言わないが、あの安倍晋三をもってしても見直せなかった河野談話を、岸田総理への攻撃材料とするのは筋が通らない。

 この件以外でも、安倍政権下で繰り返された中国による領海侵犯や挑発、習近平を国賓で招くこととなった苦悩など無かったことにして、これらをすべて岸田総理に押し付けようとすることが保守のやることだろうか。岸田政権が短期で倒れたら高市政権が樹立されるという妄想も大概にして欲しいもので、高市氏が岸田政権を支える覚悟であることをもう少し尊重してはどうか。ここで支えることができなかったら、政調会長としての高市氏にも傷が付く。

 安倍晋三が成し得なかったことを、岸田総理に押し付けるのは双方に失礼なことだ。

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【運営・執筆】竹本てつじ【転載について

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