深田萌絵と出版社の“泥沼バトル”全容解説!著作権絡みで問題か?原書無しで翻訳本を出す危うさ【KSLチャンネル】

KSLチャンネル,政治・社会



 深田萌絵さんとのトラブルになっている五月書房新社が、弁護士を選任し刑事手続きから始め、その後は損害賠償請求など民事手続きに入るということを発表しました。
 さらに五月書房新社は深田氏とのトラブルの経緯について、詳細に公開することに踏み切りました。内容時には「やっぱりか」というもので、事実であれば救いようのないものでした。

企画から中止に至る経緯概要


 まず経緯について説明する前に注意しておきたいのが、以前にも動画で警告をしていますが、深田氏をめぐるトラブルに関しては、どちらの陣営にも主体的には関与しないほうがいいです。あくまで客観的に注視するまでにとどめておきましょう。
詳しくは以前の動画を見てほしいのですが、双方が法的な手続きをとっているので、攻撃的な投稿は法的なリスクが高くなっています。

 まず今回、五月書房新社が公開した経緯について紹介します。

 タイトルは「ビッグプロット」に関する事実経過のご報告、ちなみに『ビックプロット』とは今回発売される予定だった著書のタイトルです。要点をまとめて、後ほど解説します。

①企画の発端と原稿提供の経緯について

 ・本件は、深田萌絵氏からの企画持ち込み
 ・著者自らが翻訳し原稿提供、それを編集してほしいという依頼
 ・深田氏より「英語原書の提供は不要」との説明
 ・原典とされる英語版原書は一度も提供されていない

②編集体制と進行過程における要望

 ・深田氏は三人ほどのスタッフで翻訳、日本語の文体にばらつきがあるので、編集段階で統一したい、以前一緒に仕事をした編集者に依頼してほしい、と要望
 ・深田氏が希望した編集者からは、深田氏との仕事は遠慮したいと断られた

③編集スケジュールと著者希望納期

 ・出版時期について深田氏が2025年6月頃と回答
 ・スケジュール的に厳しかったが5月初旬に修正原稿の第一稿を提出
 ・深田氏より、6月13日の講演会で初版本を販売したいとの要望

④校了後の引用確認に伴う問題

 ・著者による校了後、最終的な校閲作業の段階で、他文献からの引用と思われる記述が複数確認された
 ・かねてより深田氏による盗用を指摘してきた人物の著作と一致する可能性があった

⑤著者との連絡困難と判断保留

 ・深田氏に確認しようとしたが「あとで電話します」「明日電話します」とのSMSがあったのみで連絡が取れなくなる

⑥編集方針の変更と暫定対応

 ・やむなく原稿には直接手を加えず、 引用箇所については「出典・著者名の明記」あるいは「スペシャル・サンクス」という形での対応を決定
 ・著作権侵害など法的措置を取られることを避ける必要な措置だった

⑦著作権表示の不明確さと翻訳実態

 ・深田氏からはジェイソン・ホー氏との共著で、著作権も共同保有と説明があったが、出版社として誰一人としてホー氏と面識はなく、やり取りはすべて深田氏経由だった

⑧出版中止の決定
 ・2025年6月16日付で、本書の出版を正式に中止することを決定
 ・深田氏や関係者による誹謗中傷的な投稿や動画配信が大きな要因

⑨流通状況と在庫について
 ・書店や取次会社を通じた流通・販売は一切行っていない
 ・深田氏には著者買い上げ分として500冊を事前に納品、代金は未決済

 ざっとこんな感じなんですが、どうやら双方に問題ありそうです。

出版社の責任と権利確認

 まず、深田氏から英語原書の提供がなく、原書の著者や権利者と連絡も取れないまま出版作業を進めたのは不用意というレベルの話ではありません。企画を持ち込んだ深田氏にも責任はありますが、ここは出版の権利関係を事前に確認しなかった五月書房新社の落ち度が大きいと思います。権利が共同であったと深田氏に伝えられても、ホー氏に事実関係を確認できなかったわけですから。

 深田氏が推薦した編集者から仕事を断られたのは、昨今の騒動を受けてのことか当人同士の過去のトラブルかは不明ですが、深田氏が推薦にあたって根回しくらいはしても良かったと思いますが、ここは今回のトラブルでは重要なポイントではないと思います。

 スケジュールがタイトであったことは、深田氏の希望があったとはいえ、それを引き受けるかどうかは社としての契約の問題なので、ここをトラブルの要因としてしまうと、出版社の見込みの甘さか、安請け合いと思われてしまうので、争っても水掛け論で終わる可能性が高いです。

 で、最大の問題は深田氏から降りてきた原稿に、他文献からの引用と思われる記述が複数確認されたことでしょう。これは編集が最終的に確認することではありますが、さすがに降りてきた原稿に必要な引用先、出典元が明示されていないことが多く見つかった場合は、一時的にも企画を中止して、深田氏から納得いく説明がない限り再着手してはいけなかったと思います。
 これを編集側の判断だけで「出典・著者名の明記」をしただけでなく、「スペシャル・サンクス」という形で、深田氏の盗用を過去に指摘していた人物の名前を入れたのは致命的だったと思います。相手方が出版に協力したわけでもなく、深田氏も引用を否定する可能性が高かったのに、権利的な出展明記ではなく「スペシャル・サンクス」というのは曖昧過ぎて話になりません。

 ここまでの説明で、なんとなくお気付きの方もいるかもしれませんが、やっぱり出版社から本を出す以上は出版社が一義的に責任の大半を負うことになります。深田氏の不手際も散見され、出版社としては手に負えないという気持ちだったのでしょうが、これを深田氏側があのような行動に出るまで、無理に出版しようとしていたのは、ちょっと庇えませんね。

 個々人の問題点としては深田氏が相当ヤバいと思うんですが、やっぱり出版社が引き受けた以上は、問題を解決していくか断るかという判断をもっと早くするべきでした。はっきり言って、原書も不明で権利者にも連絡が取れない状態で、どうして翻訳の編集をして出版できると思ったのか不思議です。

 無論、出版社の言い分はこれだけでなく、ここに至るまでに相当な苦労と葛藤があったことは察するに余りあるのは否定しません。

深田氏の船に乗るということ

 最後に付け加えておきますが、出版社の道義的責任と深田氏の一連の発信が名誉棄損に当たるかどうかは別問題です。深田氏の主張は出版社の落ち度を責めたものではなく、他国の工作だの改変だのというもので、ここは出版社が否定している以上は、刑事なり民事なりの過程で深田氏側がそれを立証できなければ厳しい判断が下されるでしょう。

 深田氏がここで指摘したような出版社の落ち度を指摘したのなら理解できますが、一連の批判と発信はこういった経緯とは違う苛烈なもので、争われるのは出版をめぐる損害賠償ではなく、深田氏の発信内容が出版社の名誉を棄損し損害を与えているかどうかです。

 出版社に落ち度があったとして、深田氏の船に乗り込むのは危険だと思います。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
◆運営支援をお願いします
各種支援方法の詳細