西武そごう正月広告「さ、ひっくり返そう」の裏側で5店舗の閉店発表、人生をひっくり返される従業員と地元住民
西武そごうの正月広告が話題となっている。
新聞の全面広告として掲載された文章を読み進めると、徐々に窮地に追い込まれていくが、逆に読み進めると窮地から逆転していくように読めるのだ。これに大相撲の小兵力士である炎鵬の写真ともに「さ、ひっくり返そう」とキャッチコピーを付けている。
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文章として秀逸で話題性も抜群。この広告がネット上でも拡散されていることから、イメージ戦略としては成功と言えるだろう。だが、この広告が売る上げにつながるのか?という部分では疑問が残り、このイメージから「西武そごうで買い物しよう」となるかは疑問が残る。
また、地方で「そごう」に翻弄された地域住民からすれば複雑な思いもあるだろう。
10月に5店舗閉鎖を発表している
西武そごうは昨年10月に5店舗を占めることを発表している。
セブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武は10月、全国で5店舗を閉めると発表した。20年8月に西武岡崎店(愛知県)、西武大津店(滋賀県)、そごう西神店(兵庫県)、そごう徳島店(徳島県)が、21年2月にはそごう川口店(埼玉県)が閉店する。加えて西武秋田店(秋田県)と西武福井店(福井県)では営業規模を縮小することが決まった。
出典:徳島県が日本初の「百貨店ゼロ県」に 行き場失う上顧客 | WWD JAPAN.com
これにより徳島県は百貨店がゼロになるという。閉店時には事業譲渡や売却先を模索して従業員の再就職先を模索するものと思われるが、事実として西武そごうは自社の従業員を全国で大量に解雇するのだ。これを従業員や地元住民がどう受け止めるかはそれぞれだが、閉店を発表した直後の正月広告が「さ、ひっくり返そう」というキャッチコピーとはどんな皮肉なんだろうか。
従業員や地元は窮地に陥るが、諦めずに「他で頑張ってください」ということか。
経営破綻で「ひっくり返された」人々
2000年に前身の「そごう」が経営破綻し、それぞれ単独の会社として運営して各店舗が相次いで破産し地方は大混乱となった。閉店店舗は別の企業などに譲渡されるなどしたが、福山そごう(広島県)は閉店発表からわずか2か月の年末に閉鎖され、譲渡先も決まらず地元からの不安の声が高まっていた。
結果的に福山市がビルを債権者から買い取り、天満屋が10年契約で借り受け百貨店を運営したが経営不振で10年の契約満了をもって閉店。その後に営業を開始した企業も営業不振で2020年8月に撤退をすることが決まっている。この混乱で福山市は巨額の資金を投じてきたが、そごう破綻の混乱と後始末は終わる見込みもなく未だに続いている。
ここで例に挙げた福山市の事例は「そごう」だけが悪いわけではない。駅前ではそごう以外の商業ビルも次々に閉鎖され、老舗の天満屋と再開発で新規に建設されたビル以外は、そのほとんどが現在は解体済か解体中である。人口46万人という中核市の駅前がゴーストタウンと化している様は、別地方から訪れた人も驚きを隠せないほどだ。そごうだけが悪いわけではないが、少なからず地元に打撃を与えた企業にルーツを持つ西武そごうに「さ、ひっくり返そう」と広告を打たれると「もう、ひっくり返されたよ」と言い返したくなるだろう。
百貨店のイメージだけでは無理
今回の西武そごうの広告を評価する人たちは「百貨店は安売り量販店ではなくブランドイメージで売る」ということから、この広告を成功と見る人が多い。だが、その百貨店のイメージとやらが世間に受け入れられず、大型ショッピングセンターのリーズナブルさと長時間滞在型の戦略に押され、今では絶滅危惧種のような業種ではないか。
無論、百貨店にはショッピングセンターにはない信頼があり、高齢者を中心に根強く支持されているのも理解はできる。それでも売り上げは落ちる一方という現実を見れば、百貨店のブランドイメージなど購買につながることはなく、最早これは「駅前のモニュメント」として建っているようなものだ。
イメージも何も、まずは潰れないように「物を売る」ことに専念して、出店地域に迷惑をかけないようにしてほしい。そごうの破綻と西武そごうの閉店計画に翻弄される人々のことを考えると「さ、ひっくり返そう」は悪意にすら感じる。
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