【緊急解説】山尾しおり出馬辞退!公選法の盲点と組織の事情【KSLチャンネル】

KSLチャンネル,政治・社会



 山尾しおりさんが参院選への出馬を辞退しました。5日に会見を行う予定でしたがXで「一身上の都合」として記者会見の中止と全アカウントの削除を発表しました。

 はい、国民民主党の山尾志桜里さんではなく、NHK党から全国比例で出ようとしていた『山尾しおり』さんのことです。なんだ釣りか!と離脱しようとした方はちょっと待ってください。


 実はこの出馬辞退には意味があって、強行出馬すれば公職選挙法上も国民民主党の山尾さんに有利になるんです。複数の党の利害にも関することで、そのあたりのカラクリを詳しく説明します。

公職になろうとする者のプレッシャー


 まずNHK党の山尾しおりさんですが、出馬辞退の理由を一身上の都合としていますが、おそらく勤務先から難色を示されたり、予想以上の反響があったことで落選後の生活に不安を感じからではないでしょうか。
 YouTubeチャンネルでは早くから、参院選出馬が困難であるかのような発信をしていたという話もありますし、残念ながら当然の結果でしょう。一度でも公職になろうとすることを公表した場合は、公益性の観点から肖像権の主張も難しくなるし、こういう形で注目を集めれば落選後も周囲がそっとしておいてくれるわけでもありません。

出馬すれば国民・山尾に有利

 公選法上も出馬が困難であることは先日の動画でも説明しましたが、国民民主党の「山尾志桜里」さんと同姓同名での届け出は、この名前での過去の実績がないのでほぼ無理だし、仮に出馬できたとしても落選運動として効果があるかと言えば逆効果であった可能性が高いです。
参議院の全国比例でどういう対応が行われるかは定かではないですが、同姓同名の場合は名前以外に判別可能な文言を付記することがあります。基本的に公職選挙法では、他事記載といって名前以外の「がんばれ」とか余計なマークを付け加えた票は按分や疑問票ではなく無効票とされますが、一方で「職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない」という条文もあります。
これを利用して、例えば「愛知 山尾しおり」など、選管が区別するよう呼びかけるケースは過去にもあったようです。こうなったら、山尾しおりという名前に一気に注目が集まり国民の山尾さんにも有利になります。

 どちらの票か判別できない場合は、それぞれに按分されるわけですが、当然ながら本人の知名度も高く国政政党に所属する国民の山尾さんに多く配分されるわけですが、こういった騒動によって国民の山尾さんとNHK党の山尾さん双方の票が通常よりアップするので削られる票よりも上乗せせされる票が多くなるでしょう。
 ここでポイントなのが国民民主党の山尾さんは、NHK党の山尾さんと争うわけではなく、国民民主党の比例名簿内で順位を争うことになるということです。要するにNHK党から山尾しおりさんが出馬して注目を集めれば、国民民主党の山尾さんは、党内の名簿順位が上がって当選確率がアップするわけです。

連合候補を押し出す危険性も

 一方、これはあくまで仮定の話ですが、国民の山尾さんが落選予測だった場合に、順位が当選圏内に入って連合の組織内候補を押し出してしまい党と連合を対立させる効果はあるかもしれません。
 実際に前回2022年参院選は、国民民主党が弱小過ぎて連合枠を確保できる見込みがなかったことから、基幹労連の組織内候補だった村田享子さんが、産別では畑違いの立憲民主党から出馬して当選しています。3年ごとに交代で組織内候補を出していたJAMも今回の選挙は国民民主党ではなく立憲民主党公認なので、国民民主党は二つの支援組織を失ったわけです。
 山尾さんが連合組織内候補を押し出せば、他の産別も次から立憲民主党にその枠を移動するということは考えられるかもしれません。

 過去には、れいわ新選組の山本太郎とNHK党の山本太郎というのがありましたが、れいわ新選組の山本太郎が全国比例ではなく東京選挙区であったため、ただただNHK党の山本太郎が。れいわの山本太郎が全国比例だと誤認した票を総取りするという結果でした。

 今回もこの再現を狙ったのかもしれませんが、こうやって専門的に分析すると落選運動どころか国民民主党の山尾さんを当選確率をアップさせることになるわけです。

【運営・執筆】竹本てつじ【転載について
◆運営支援をお願いします
各種支援方法の詳細